日本への木材貿易・直輸入の流れBLOG DETAIL
商慣習の違いもさることながら、気候や梱包方法、施工や寸法の違いなど、木材の貿易は一筋縄ではいきません。いくら下準備をおこなっておいても、実際に交渉や現地視察をおこなってみると思わぬトラブルに見舞われることが多々あります。
今回の記事では、社長自ら海外の木材視察に赴く当社流の「木材直輸入」に関する流れを通して紹介いたします。
パートナー選び
木材や木材製品の輸入は現地での信頼できるパートナー選びから始まります。今回の記事では、商社を通さず、直接輸入するパターンにこだわるとしましょう。その場合、原産国側のメーカーや代理人などとのやり取りを開始する必要があります。
ここでのパートナー選びはその後の流れを全て左右するほど大事である一方、海外にネットワークの無い場合ではその選定作業は簡単ではありません。
- JETROのようなオンラインマッチングを活用する
- 海外のビジネスマッチングサイトを活用する
- ビジネスパートナーの紹介などを活用
- 直接輸出元に連絡する
オンラインでビジネスパートナーを探す場合、こちらが「買い手」の場合たくさんの売り手からコンタクトがなされますが、玉石混交した多くの企業群から「信頼できる」パートナーを選ぶことは簡単ではありません。
その点、既に取引実績のある知り合いの海外パートナーの伝手を探るほうは信頼性は増しますが、一度にリーチできる数に限りがあるうえ、紹介された手前断りにくいというデメリットもあります。
輸出元へのコンタクトは割と有効で、こちら側が買い手である以上高い確率で返信があります。ただ、輸出経験が豊富な輸出元でないと、後から必要となる書類が得られない、輸送途中で破損が起きた、などのトラブルに繋がります。
現地視察
パートナーを厳選した後、基本的に木材業界では「現地視察」をおこないます。この場合、現物である木材や木材製品を視察する目的と同時に、輸出元となる会社の規模や役員の人柄などもチェックする必要があるわけです。
- 製品となる木材の現物に問題はないか(サイズ、節、色合のばらつき、含水率、等)
- 会社の製造工程に問題はないか
- 会社の検品体制に問題はないか
- 梱包方法に問題はないか
この現地訪問のタイミング、製品によっては加工前の状況で検品することもあれば、加工後のできあがったタイミングで見に行くこともあります。いずれにせよ、限られた時間と情報から良しあしを判断する必要があるため、もっとも木材従事者の見る目が問われる工程とも言えるでしょう。
交渉
現地視察前におこなうケースも多いですし、視察後に改めて最終的な貿易条件を煮詰めることも少なくありません。交渉で引き合いに出される条件は以下のように多岐にわたります。
輸送方法・ロット
大量の木材や木材製品を運搬するのに適した輸送方法はコンテナ出荷です(よほど特殊な案件やサンプル品の出荷でない限り、飛行機での運搬は多く用いられません)。問題はそこからで、どこまでの輸送条件なのか(EXW, FOB, CIF等のインコタームズの確認)をお互いにすり合わせなくてはいけません。
- コンテナに載せるロットはどれくらいか
- 製品の引き渡し場所はどこか
- 引き渡し納期はいつか
- 保険の有無(または誰がどこまで責任を持つか)
出荷元がどこまで対応してくれるかは案件次第ですが、個人的な経験則を述べると、遠隔地であればあるほど出荷元サイドの港渡しを好みます。逆に、中国や台湾など輸入側の港まで運んでくれることが多いと言えますが、あくまでケースバイケースなので注意が必要です。
支払い方法
「海外からの木材輸入支払い」の項でまとめた通り、木材輸入案件において支払いタームは難航する交渉条件の一つと言えます。輸出する側は少しでも不払いのリスクを回避したいですし、輸入する側は支払った後製品が納入されないリスクを回避したいわけで、綱引き状態が続くわけです。
どの支払い条件が最適解かは個々の貿易によって異なるため、詳細は過去の記事を参照してください。
金額交渉
ビジネスの常で、当然買い手は安く買いたいですし、売り手は高く売りたいです。一般的に、売り手は限界利益を下回る価格での販売はおこないません(将来必ず回収できる算段があれば別ですが)。
そのため、切った張ったの金額交渉も、あくまで限界利益を上回るラインでの話であって、そこからどこまで値切れるかは交渉人の腕の見せ所です。
世の常で、「値切って」だけでは話が通りませんが、条件を付けることで金額的な妥協(つまり値下げ)を引き出すことは可能です。例えば
- 全額先払いする代わりに値引きしてくれ
- 不良品に対してクレームを入れない代わりに値引きをしてくれ
- 規格や条件を輸入元にあわせるので価格をあげないでくれ
- 工場渡しで買い手側がフォワーダーを手配するので値下げしてくれ
- 年間XX個のコンテナの輸入を約束するので値引きしてくれ
売り手側の料金には、当然の通り「クレームへの対応」「人件費」「銀行の手数料」などが含まれているので、それらの代わりとなる条件交渉をおこなえば、値引きを引き出すことはできるかも知れません。が、どれをとっても買い手側に多少なりともリスクが発生するやり方ですので、値引きの交換条件でどのカードを切るかは慎重に考えましょう。
出荷
本来であればこのあたりのタイミングで「支払い」が発生するのですが、実際のタイミングは支払い条件(出荷前のこともあれば、出荷後のこともある)次第なので割愛します。
さて、交渉が締結されたら、いよいよ出荷です。両者間で定められた売買契約が成立すると(契約書を設けるケースもあれば、請求書に対する支払いでもって売買契約成立と見なされることもある)、売り手側は出荷の準備に入ります。
買い手側は、港でコンテナを遅滞なく受け取るため、売り手側から速やかに船荷証券を受け取る必要があります。必要書類が手元になかったり、紛失していたりすると、船荷が受け取れない、あるいは大幅に受け取りが遅れて手数料や保管料を支払うことになりかねません。
輸入経験豊富な輸入元であっても、港での通関作業を自力でおこなうことは滅多にありません。実際には、乙仲(フォワーダー)と呼ばれる通関業者のサポートを借り、輸入手続きを終えます。
到着・検品
売り手・買い手間の契約次第ですが、商品が港に到着したら「速やかに」検品することをお勧めします。特に、木材は湿気に弱い製品です。梱包に不備があったりすると、長い航海の間に膨張したり、破損したりといったことが起こり得ます。
到着した積み荷が破損していた場合の責任の所存(陸運業者なのか、海運業者なのか、出荷元なのか、)は貿易条件によりますが、瑕疵の発見が遅れれば遅れるほど責任の特定が困難になるので、できるだけ早い段階で不良品があれば見つけておく必要があります。
木材貿易ビジネスの世界は特殊は、海外で育った木材のクオリティのチェックもさることながら、このような支払い条件や輸送条件のすり合わせなど、度重なる交渉ごとのハードルも非常に高いと言えます。当社はアジア諸国、ヨーロッパ、北米などとの貿易の実績を抱えており、社長自ら世界中を飛び回り検品に赴いては、厳選された木材の輸出入を心がけております。木材や木材加工品の輸出入をお考えの方は、是非ともお気軽にお問合せください。