海外の木材製品を輸入する際の支払い方法(後編)BLOG DETAIL

木材貿易の世界は一回の貿易量が多くなりがちで、そのため支払い手段にも注意を払う必要があります。今回は、前回の記事の続きとして「木材製品を輸入する際の支払い方法」について解説をおこなっていきます。

支払い方法

前回のブログの続きです。前金払いは、輸入側のリスクが高いため、少量での輸入、納期に間に合わせるための緊急輸入、その他の支払い方法や頭金などと組み合わせて用いることが推奨されます。今回の記事では、輸入者側のリスクを軽減できる支払い方法の特徴について紹介していきます。

  • 前金全額払い ←前回のテーマ
  • 頭金支払い(前金一部払い) ←前回のテーマ
  • D/P決済
  • Cash against Document
  • Letter of Credit
  • D/A決済
  • 代金引換
  • 後払い
  • 信用保険による担保後、後払い
D/P決済

Document against Paymentの略称です。後述するCash against DocumentやDocument against Acceptanceといった似たような概念とは異なるので注意が必要です。D/P決済の場合、輸入者側は船荷を受け取るのに必要な船荷証券を、為替手形の代金を支払う形ではじめて受け取ることとなります。

この決済システムであれば、船荷証券を銀行が既に預かっている(商品は既に出荷された)状態ですので、輸入者側にとっての最大のリスクである「代金を払ったけど製品を受け取れない」という問題を解消することができます。

輸出者側からしてみても、「製品だけ受け取って雲隠れ」されるリスクは避けられるので、お互いにバランスのとれた支払い方法となります。もっとも以下の表のとおり、お互いの登場人物にそれなりのリスクとデメリットが生じることになるので注意しましょう。

輸入側 輸出側
メリット 少なくとも、製品が出荷された確証をもって代金を支払うこととなる 製品を受け取られて、輸入者が支払い拒否、という最悪の事態は避けられる
デメリット 銀行を介するので、手数料や書類の手間が生じる

リスクがゼロではない

銀行を介するので、手数料や書類の手間が生じる

リスクがゼロではない

具体的なリスク 届いた商品が欠陥品の可能性もある 輸入側の倒産など、製品は出荷されたにも関わらず代金を回収できない、というリスクは回避できない
Cash Against Document

貿易条件の複雑化に伴い、Cash Against Documentの方法も多様化してきていますが、オーソドックスなやり方としてはDP決済同様、輸出者が代金を受け取り、その対価として船荷証券を発送する、という形がイメージしやすいでしょう。

当社間の信頼に基づき銀行を介さず(銀行を介するパターンもありますが)、あくまで両者間で行われるという点がポイントで、その点でDPよりも簡易で、手数料と手間を省くことが可能です。もっとも、そのため輸入者にとってのリスクはややDPよりも上がる点に注意が必要です。

すでに何度も取引をおこなっており、お互いに信頼関係が築かれている状況であれば便利な貿易条件と言えます。

輸入側 輸出側
メリット 少なくとも、製品が出荷された確証をもって代金を支払うこととなる 製品を受け取られて、輸入者が支払い拒否、という最悪の事態は避けられる
デメリット リスクがゼロではない リスクがゼロではない
具体的なリスク 届いた商品が欠陥品の可能性もある

代金を支払ったが船荷証券が届かない

輸入側の倒産など、製品は出荷されたにも関わらず代金を回収できない、というリスクは回避できない
Letter of Credit

結局、上述のような方法では輸出者、輸入者、あるいは双方のリスクが拭えないというわけで、双方のリスクを最小限に抑えるために用いられるのがこの「Letter of Credit(L/C)」です。上述のDPでは、輸入者に手形の引き取りを拒否されると輸出した側は輸出し損となりますが、L/Cの場合は輸入側の銀行がそのリスクを担保する形となり、輸出側、輸入側双方の貿易リスクが拭われることとなります。

話だけ聞くと美味しい話のように思えますが、後述の表のように万能とは言い難い大きなデメリットを抱えています。

輸入側 輸出側
メリット 製品を受け取れないというリスクを回避できる 代金を回収できないというリスクを回避できる
デメリット 銀行を巻き込むため、大きな手数料がかかる

書類の手間が大きい

与信の問題でLC開設できないこともある

銀行を巻き込むため、大きな手数料がかかる

書類の手間が大きい

具体的なリスク 書類の不備によっては製品を回収できない

 

書類の不備によっては代金を回収できない

特に、書類上の問題はかなり双方の負担が大きく、よほど大きな案件であったり、初めての貿易相手といった特殊な案件以外ではあまりコスパにあわないかも知れません。

後払い

文字通り、製品が港に届き、検品を済ませてから輸入した側が支払いをおこなう方式です。前払いとは逆に、輸入する側が圧倒的に有利な条件となっています。

輸入側 輸出側
メリット ほぼ全てのリスクを回避できる

迅速に取引できる

書類などの手間が少ない

すぐに出荷できる

デメリット ほぼ無し(ただし、現実には後払いで交渉成立することはほぼあり得ない) リスクが高い
具体的なリスク ほぼ無し

 

代金を回収できないリスクが生じる

あまりに輸入側有利な条件のため、実際には後述のように、保険会社などにリスクを転嫁する形で行われます。

信用保険による担保後の後払い

可能であれば一番コスパの良い取引方法とも言えます。輸出する側の売掛リスクを保険会社に担保してもらうことで、輸出側は一々銀行を介する手間や前金払いの入金をまたずして即座に出荷することが可能となり、売掛リスクが生じた場合には銀行から回収することができます。

輸入側 輸出側
メリット ほぼ全てのリスクを回避できる

迅速に取引できる

ほぼ全てのリスクを回避できる

迅速に取引できる

デメリット 与信審査によっては保険が掛けられない 与信審査によっては保険が掛けられない

保険料がかかる

具体的なリスク ほぼ無し

 

ほぼ無し

木材貿易における「リスク」とは

前回に引き続き、今回の記事では木材貿易の支払いにまつわるリスクと、その回避方法に関して解説をおこないました。もっとも、支払い上のリスクは工夫をこらせば回避可能なこともありますが、以下のようなリスクにはまた別の方法で備える必要があります

  • サプライヤーの突然の倒産、仕入れができなくなった
  • 製品は受け取ることができたが、木材のクオリティが悪く使い物にならないことに気が付いた
  • 輸入後に、日本の湿度環境では用いることができないと気が付いた
  • 輸入はしたものの、木材の加工を約束していた工場が引き受けを拒否した
  • 建材の輸入をしたが、販売後にそれがもとで利用者がケガをして、損害賠償を請求された、等々

こうした場合、保険やデリバティブなどを活用することもできれば、「実際に工場や現場を訪れて、職人の目線でクオリティを確認する」という、最終的には人間ありきの確認作業がリスクを回避する上で重要になります。

木材貿易ビジネスの世界は特殊で、海外で育った木材のクオリティのチェックもさることながら、このような支払い条件や輸送条件のすり合わせなど、度重なる交渉ごとのハードルも非常に高いと言えます。当社はアジア諸国、ヨーロッパ、北米などとの貿易の実績を抱えており、社長自ら世界中を飛び回り検品に赴いては、厳選された木材の輸出入を心がけております。木材や木材加工品の輸出入をお考えの方は、是非ともお気軽にお問合せください。

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