ウッドショックは落ち着いた?木材余りと2023年の展望BLOG DETAIL

最高期には1500$(mbf)をつけていた米国木材価格は、2023年5月現在400$(mbf)と、コロナやロシアによるウクライナ侵攻前の価格に下落しました。高騰を続けていた木材価格が金利の値上げによってひと段落どころか水準以下に急落し需要が冷え切ったことは、さながら日本の不動産バブルのような所感を呈しています。

今回のウッドショックでは日本の木材サプライチェーンの脆弱さが浮き彫りになりましたが、果たしてこのような事態は二度と起こりえないのでしょうか?本記事では、1)2019年以降約3年間続いた木材不足のおさらい、2)世界的な木材不足が突然解消され逆に木材需要が冷え込み始めた理由、そして3)将来的な展望の3つの軸から、木材市場を解き明かしていきたいと思います。

序説:木材価格は何故読みづらい?

さて、本題に入る前に木材価格に関する簡単な解説を行いたいと思います。

一般的な農作物同様、木材は「供給の弾力的が小さい」製品カテゴリとして見なされることをまずは理解する必要があります。木材の供給弾力性が小さいとは、すなわち市場の木材価格が高まったとしても、植樹から伐採~製材まで長いプロセスを要する木材は簡単にその供給量を調整できず、市場に出回る量が短期的に増えることはない、ということです。

この、本来木材が抱えている「市場に出回るまでのリードタイムが異様に長い」という特性と、市場に短期間にもたらされた木材需要を決定づける様々なイベントが相まって、今回の異常な価格乱高下の原因となったわけです。

木材が市場に出回るまでには長いプロセスが・・

1:なぜウッドショックは起きたのか?

2022年に記した「ウッドショックはいつまで?」の記事で解説している通り、今回のウッドショックは複雑な要因が麻の如く絡み合って発生したものでした。

その中でも、いくつか重要な要因を挙げるとすると以下のようなものでしょう:

  • コロナによる新築需要の増加(需要増)
  • 低金利政策と新築ブーム(需要増)
  • コロナによる工場の停止(供給減)
  • コロナによるコンテナ不足(供給減)
  • ロシアの木材保護政策(供給減)
  • ロシア戦争による木材輸出減(供給減)
  • 虫害、ハリケーン、山火事(供給減)

要するに、様々な要因によって(あるいは数珠つなぎのように重なって)「木材需要の増加」と「木材供給の低下」が同時に白熱した結果、過去に類を見ない規模の木材不足と木材価格高騰が続いたわけです。

2:木材需要は何故冷え込んだ?

うち、以下の通りコロナに端を発する問題が2022年までにほぼ解消されたことで、2019~2022年の異常な木材不足も終焉を迎えることとなりました。ロシアへの経済制裁と東欧の混迷は続いていますが、こうした問題はあらかじめ市場に織り込まれていれば各国も対応が可能で、開戦から1年も経過したためすでに代替の木材などが市場に浸透しつつあります。

  • コロナによる新築需要の増加(需要増)→巣篭もり需要終焉
  • 低金利政策と新築ブーム(需要増)→金利値上げと米新築ブームの終焉
  • コロナによる工場の停止(供給減)→回復
  • コロナによるコンテナ不足(供給減)→回復
  • ロシアの木材保護政策(供給減)
  • ロシア戦争による木材輸出減(供給減)
  • 虫害、ハリケーン、山火事(供給減)

さて、これによって木材価格高騰が終焉を迎え一安心か、と言われると実はそうではなく、今回の異常な木材不足が新しい経済的な火種をもたらしました。冒頭で説明した通り、木材製品は右から左に用意できる代物ではありません。木材不足時に様々な業者が慌てて発注をかけた在庫が、ここにきて山のように倉庫に積みあがることとなったわけです。

3:今後の木材市場の行方

もう一度冒頭のお話に戻りましょう。木材は、市場に出回るまでのスパンが非常に長い製品として知られています。現在、在庫を抱えた業者が今度再び供給の蛇口を閉じると、それが市場に反映されるまで何か月、何年とかかります。ところが、その何か月後、何年後に再び木材需要を喚起するなにかイベントが発生していないとは、誰も言い切れないのです。

Though lumber volatility has receded from its 2020 highs, the past several years have demonstrated the ability for lumber prices to be volatile, and those in the lumber supply chain must manage exposure to wild swings in price.(institutionalinvestor)

和訳「木材価格の変動は2020年の最高値から後退したものの、過去数年間は木材価格の不安定さは過去数年で立証されており、木材サプライチェーンに関わる人々は、価格の乱高下に対するエクスポージャーを管理しなければなりません。」

また、上記の事情はアメリカやヨーロッパにおける木材市場であり、日本における状況は異なる点にも注意が必要です。輸入材自体のドルベースでの価格は落ち着いたものの、円高や燃料代の高騰、海外の市場が日本に反映されるまでのタイムラグなどにより、実際の所日本における価格減を実感できるには至らないといえます。

喉元過ぎれば熱さを忘れる、ではありませんが、例え外国材価格の高騰がひと段落したとしても、国産材の使用などを国策として取り入れていくことを忘れてはいけないでしょう。木材の製品化には長い時間がかかりますが、それ以上に木材従事者の育成には時間がかかるため、長期的な目線で将来くるであろう新たなウッドショックと国難に備える必要があります。

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