日本の森林面積ベスト10の県BLOG DETAIL
日本は古来より、自然に恵まれた豊かな土地を有しています。日本人の性格に深く根差した、四季折々の自然を慈しむ感情も強く、現代でもキャンプや森林浴など、自然と触れ合いリラックスする機会も多いのではないでしょうか。
数字にすると実感が湧きづらいかもしれませんが、2022年現在の日本の国土に存在する森林面積は約2500万ヘクタール。これは日本の国土の67%にあたり、日本の国土の3分の2は森林に覆われている計算になります。ちなみに、国土の森林面積のうち約半分にあたる48%は人工林で、それらの多くは第二次世界大戦後に植林されました(参照:軍需物資としての森林資源の歴史)。
東京など、周りに山や森の無い環境に暮らしていると中々ピンとこないことが多いですが、果たしてこの広大な森林は日本のどこにあるのでしょうか?今回は日本の森林面積が多い都道府県をランキング形式でご紹介します。
1位 北海道
北海道は広大で、本州にはない雄大なスケールの自然があります。中でも世界遺産に登録されている知床半島の木々や動物が有名ですね。手つかずの原生林に囲まれ、その多くが国立公園にも指定されている、そんな北海道の森林面積は国内の都道府県の中でも圧倒的な面積を誇る554万ヘクタールです。これは北海道の土地面積(北方領土を除く)の70.6%となり、日本の平均森林面積割合を若干上回ります。
ちなみに、そのうち国有林は55.3%、民有林は26.7%になります。手のくわえられていない天然林が多く、人工林が少ないのも北海道の特徴で、一人当たりの森林面積が全国平均の約5倍と高い数値を誇っています。原生林は自然保護のため扱いにくいことが多く、実際に商業利用される木材の多くは人工林からの伐採となります。北海道の主な人工林はカラマツやトドマツで、合板や梱包材などの原料に利用されるのが特徴的です。また、豊富な木材資源を背景に産業の発展した北海道の旭川家具なども有名ですね(参照:日本の5大家具産地)。
北海道における林業従事者の数は他の都道府県同様、昭和~平成期間を通じて減少傾向にありましたが、平成17年の約3700人を底に回復基調に入り、令和元年には4000人台を回復しています。国内の林業従事者の人口が減り続ける中、従事者人口の回復に成功した特異な例とも言えるでしょう。
2位 岩手県
岩手県には全国屈指のヒメボタルの群生地で有名なブナに覆われた折爪岳や、日本百名山で知られる岩手山、八幡山、早池峰山などが知られています。そんな岩手県の森林面積は117万ヘクタールで、これは岩手県の実に土地面積の76.7%に達します。そのうち国有林は33%、民有林が67%と民有林の比率が高いのが岩手県の森林の特徴で、民有林は他県との県境に集中しています。
生うるし、木炭や木酢液の生産も全国1位と、潤沢な木材を活かした資源活用がなされていることも特徴的です。森林資源が多いことがかならずしも地域経済の活性化に繋がらない地方自治体が多い中、上手く生産に結び付ける試みをおこなおうとしています。
ちなみに、樹齢7000年と言われる三陸町の越喜来の杉は岩手県のものです。7000年前と言えば、日本列島と大陸がちょうど切り離された時期とも言われ、稲作や文字は大陸から伝わってきてすらいません。
3位 長野県
ご存じの通り長野県は本州のほぼ中央に位置し、8県に囲まれている内陸県です。標高の高い山が多く、山岳環境を中心に5つの国立公園、3つの国定公園、6つの 県立公園の計14地域が自然公園に指定されていています。そんな長野県の森林面積は107万ヘクタールで、これは北海道や岩手県を上回る、長野県の土地面積の78.8%という高い割合になります。
そのうち国有林は35%、民有林が65%と、民有林の割合が高い岩手県とほぼ同じ結果になっています。ちなみに、長野県の民有林の52%はカラマツで、次点のスギが17%の割合を考えると、カラマツが群を抜いて多いのがわかります。
長野県の林業従事者は北海道に次いで全国2位を誇り、林業の産出額では北海道をも上回ります。もっとも、潤沢な森林資源を持つ長野県ですが、この森林資源の備蓄量が多すぎることが悩みの種にも。人工林の7割がすでに間伐を待つ適齢期を迎えていると言われる一方、産業の空洞化によって林業の担い手が不足している状況です。特に、北海道と違い林業従事者人口が年々大幅に減り続けているのは頭の痛い問題です。
4位 福島県
北海道、岩手県についで日本3位となる面積を誇る福島県の気候は、日本海よりと太平洋側よりとで大きく異なり、群生する自然植物も場所によって異なるのが特徴的です。
福島県には、15カ所の国立公園・国定公園・県立自然公園があり、全体の森林面積は97万ヘクタールです。これは福島県の土地面積の70.7%となります。そのうち国有林は42%、民有林は58%です。民有林の58%はナラなどの広葉樹ですが、41%はスギなどの針葉樹です。また、蓄積されている民有林の82%はスギになります。こうした豊富な森林を活用し、福島県は他にも椎茸やなめこの生産が盛んで、生の椎茸は全国8位の生産量を占めています。
2011年発生の東日本大震災によって、林業の生産活動が著しく停滞、長野県同様に整備の行き届かない森林面積が増えていることは目下の課題と言えるでしょう。
5位 岐阜県
岐阜県は本州の真ん中にあり、長野県同様、数少ない海を持たない内陸県の一つです。岐阜県の東部は広く長野県と接しており、飛騨山脈が連なります。北部には奥穂高岳、槍ヶ岳など北アルプスを代表する山々が連なり、手つかずの自然を多く残します。
県内では15 の地域を県立自然公園として指定しています。そんな岐阜県の森林面積は86万ヘクタールです。これは岐阜県の土地面積の81.2%となります。そのうち国有林は20.8%、民有林が79.2%と、民有林の割合が高くなっています。民有林の93 %はスギ、ヒノキです。また、東濃地方から飛騨地方にかけては、ヒノキ材の人工林が広がっています。
このような木材資源に囲まれた岐阜県は、古来から木工が盛んで、奈良時代の律令資料には既に「飛騨工」の名前が登場、また今でも日本5大家具産地として飛騨家具が有名ですね。ちなみに、岐阜県全体で見ても日本国内で木製家具の生産量第三位となっています(一位大阪、二位愛知)。
6位 新潟県
新潟県は日本海沿岸に位置しており、県内には20箇所の自然公園があります。新潟県の森林面積は86万ヘクタールで、これは新潟県の土地面積の68%となります。そのうち国有林は65.6%、民有林は18.9%です。県全体ではブナやナラなどの広葉樹が多いのですが、民有林ではスギやマツなどの針葉樹が大半を占めます。また新潟県はきのこの生産も盛んで、生産量は全国2位となっています。
新潟県の林業生産量は長野県に次いで全国2位ですが、長野県同様、やはり整備の行き届かない森林の拡大、林業従事者の人口減が課題となっています。
7位 秋田県
秋田県には大ヒット映画「もののけ姫」のモデルとも言われている白神山地があります。この広大なブナ林は1993年にユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録されました。他にも、田沢湖は水深日本一、十和田湖はカルデラ湖として名を馳せています。
そんな秋田県の森林面積は84万ヘクタールです。これは秋田県の土地面積の72.1%となります。そのうち国有林は47%、民有林は53%です。天然林はブナなど広葉樹ですが、人工林の92%はスギが占めています。
8位 山形県
山形県は自然の作り出した芸術、日本でも珍しい樹氷を見ることで有名です。これは蔵王連峰の特別な気象条件とアオモリトドマツが造り出したもので、地元では「スノーモンスター」の名で親しまれています。
そんな山形県の森林面積は67万ヘクタールで、これは山形県全体の土地面積の71.8%となります。そのうち国有林は53%、民有林は47%です。山形県には海岸地帯のクロマツやタブ林から、山岳地帯のハイマツ林に至るまで多様な森林が分布しています。県土の24%を占める天然のブナ林は、日本一の面積を誇っています。
ちなみに、山形県と言えば将棋の駒の生産が日本一であることで有名で、日本の生産量の9割を山形県天童市が担っていますが、将棋の駒に使われる樹種としては実は鹿児島県の薩摩ツゲが有名です。
9位 青森県
青森県は津軽国定公園の千畳敷や下北半島の仏ヶ浦などの景勝地をはじめ、秋田県にまたがる世界遺産の白神山地や、映画でもよく知られる八甲田山など、雄大な自然に囲まれています。そんな青森県の森林面積は63万ヘクタールで、これは青森県の土地面積の65.6%となります。そのうち国有林は62%、民有林は37.7%です。
ブナ林として有名な白神山地を有する青森県はブナの蓄積量が日本一です。また民有林の58%を占めるスギ林は全国4位の面積を誇ります。また県木のヒバ(ヒノキアスナロ)は、青森県が全国の蓄積量の80%以上を占めています。
10位 広島県
広島県は中国地方に位置し、南は瀬戸内海、北西部は中国山地と、変化にとんだ自然に囲まれた特徴を持ちます。トップ10ランキングの中では唯一の西日本からの選出となりました。上位の県と異なり、広島には大小1,000にも及ぶ島があり、瀬戸内海国立公園は国立公園にも指定されています。
広島県では、平成19年から「ひろしまの森づくり事業」に取組み、森林を育てる活動をしています。そんな広島県の森林面積は61万ヘクタールです。これは広島県の土地面積の72.1%%となります。そのうち国有林は32%、民有林は68%です。人工林のスギやヒノキは戦後に植林されたものです。つまり、これから主伐採を迎える木が多いのです。
潤沢な森林資源を元に、日本でも有数な家具の生産地で知られる府中市を抱えることも広島の特徴で、岡山と広島の県境で切り出された備後キリを活用しています。
まとめ
ランキングで見ての通り、森林面積の多さが、必ずしも木材資源の豊富さに繋がるわけではありません。木が、木材資源として消費者の手元に届くまでには、林業や運送業者、加工業者など様々なプロセスを経てくるため、こうした林業従事者が不足してしまうと、単純に森林面積を増やせば森林不足が解消するわけではない、というのが面白いテーマとも言え、日本の木材産業にとって頭の痛いテーマとも言えるでしょう。
昭和55年からの30年で、全国の林業従事者の人口は13万人から45000人に、実に3分の1にまで減少し、高齢化も顕著です。今後も日本経済にとって悪い影響を与えるであろう木材価格の高騰などに立ち向かうべく、官民一体となって林業従事者の育成とキャリア支援が重要になってくるのではないでしょうか。
その他ランキング記事