世界の森林面積トップ10の国ランキングBLOG DETAIL

国土の3分の2が森林で覆われた日本は、世界でも屈指も森林資源の豊富な国として知られています。日本の森林面積2500万ヘクタールという値は過去50年程度ほぼ同水準で推移していますが、森林資源の豊富さを表す森林蓄積(木の幹の体積の総量)の値で見ると、過去50年で3倍近くまで増加しました。

さて、このように森林資源に恵まれた日本ですが、世界を見渡すと日本の森林面積は23位、日本よりも森林面積を持つ国が他に22ヵ国もあるわけです。ただ、後述の通り森林面積が多い=木材資源が豊富、とはならないのが面白いところです。今回は、これら世界の森林面積ランキングのトップテンを順に紹介していきたいと思います。

1位:ロシア

世界の森林面積の実に20%を占め、年間2~3兆円の外貨収入をもたらし続ける広大なロシアの森林資源は、北欧や中国など、近隣諸国の木材ビジネスの重要な輸入元にもなっていました。マツやトウヒなど、針葉樹材がメインの樹種となりますが、中にはシベリアで採れたオークなどの広葉樹材も含まれます。

その潤沢な木材面積にも関わらず、産業構造上の問題などからその資源力を活かしきれてないという声は前々から上がっており、2022年にはロシア政府は原則的に原木の輸出を禁止し、国内の製材産業を育成する方向に舵を切り、周辺国の不興を買っています(詳細に関しては「ロシアの丸太原木輸出規制が日本に与える影響」を参照ください)。

ロシア政府の決定に左右される状況はソ連時代から変わっておらず、2022年のロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うロシアの森林認証資格の剝奪など、ロシア木材関連のビジネスは不安定な状況が続いています。世界で最も豊かな森林資源にめぐまれてはいるものの、歴史上中々有効な活用の仕方がされていないと言えるかもしれません。

ロシア材

2位:ブラジル

世界の原生林の3分の1を占めるといわれるブラジルの森林面積ですが、熱帯雨林として多様な生物の温床となっており、必ずしも木材資源として商業的な活用ができるとはいいがたいでしょう。実際に、木材資源として使用される樹種のほとんどはマツとオーストリアから持ち込まれて植樹されたユーカリで、5億ヘクタールを超える天然林は焼き畑農業や都市開発などのために伐採され、有効活用されずに朽ちていくといった現象が長らく問題化しています。

こうした森林破壊によって過去30年で4000万ヘクタール(日本の森林面積の2倍弱)の森林が失われており、近年になってブラジル政府も本腰を入れて森林破壊に歯止めをかけるべく各種政策を打ち出しました。その成果もあって、ブラジル全体の森林面積のうち、FSC/PEFCの認証を受けた面積は1000万ヘクタールと増加していますが、原住民や動植物の保護など、経済発展と生物多様性問題の間でジレンマに陥っています。

3位:カナダ

世界最大級の木材資源輸出大国のカナダは、世界3位の森林面積保有国でもあります。ロシア同様、マツ、ポプラ、トウヒといった針葉樹が木材資源としての大半を占め、針葉樹材だけで毎年250億$をもたらす、カナダ経済を牽引する主要産業の一つとしてもカウントされています。

森林保護政策、クリーンエネルギーへの転換など順風満帆に見えるカナダの木材産業ですが、見えざる問題も多く孕んでいます。直近ではアメリカ政府がカナダの森林産業は不当に政府から助成金を受けたダンピング材であると判決付け、制裁のために法外な関税を課すこととし、米‐カナダ間に不穏な空気が流れています。

また、昨今の温暖化による森林火災、ハリケーン、キクイムシなど虫害の発生などによって毎年多くの面積の森林が消失するなど、乗り越えなくてはいけない問題に直面しています。

4位:アメリカ

南北3000kmにわたる広大な国土と気候条件を持つアメリカには多種多様な樹種が生息しており、潤沢な経済力と技術力にも引っ張られ、アメリカの森林産業は世界最強の力を持っていると言っても過言ではありません。アメリカのGDPの4%(30~40兆円程度)を木材関連の製品が占めると言われており、その産業に従事する労働者、研究費用など世界の木材市場に与えるインパクトはまさに桁違いでしょう。

カナダ同様、豊富な針葉樹資源に恵まれる一方、日本ではアメリカ産の広葉樹(チェリー、メープル、ホワイトオーク、ウォールナット)などもたびたび目にすることが多いのではないでしょうか。

現在では森林認証にも積極的に取り組み、持続可能な成長に特に力を入れていますが、アメリカ合衆国は森林破壊と不可分の歴史を持っていました。開拓使たちは森林を伐採し開墾することで産業化し、アメリカの経済発展をおこなってきたわけで、その森林破壊の歴史を繰り返さないよう、現在ではアメリカは環境破壊にはセンシティブになっているわけです。

5位:中国

青や赤に濁った川の色、もくもくと都市部に立ち込める黒煙、森林伐採によって森を追われた野生動物、とひと昔前までやたらと暗いイメージのつきまとっていた中国の環境問題ですが、実際には過去30年のうちに中国は自国の森林面積を16パーセントから22パーセントまで改善し(日本1ヵ国分以上の面積!)、世界でも森林政策の優等生と評価の声があがっています。

最も、膨大な人口を抱える中国にあっては、経済成長のため木材資源が慢性的に不足しております。2009年に比べ、2019年の中国の木材輸入量は4倍に増加し、世界の木材資源を買いあさる図式が描かれています。

近隣諸国から原木を買い、自国で加工して第三国に輸出する、というのが中国木材ビジネスの黄金パターンでしたが、長い間蜜月関係にあったロシアが原木の輸出規制に踏み切ったことによりこのモデルが崩れつつあります。

6位:コンゴ民主共和国

コンゴ民主共和国(コンゴ共和国ではないほう)という、日本人にはあまり聞きなれないアフリカの国名ですが、世界第6位という広大な森林面積を保持し、ボノボやオカピ、マウンテンゴリラなど世界でも希少な哺乳類、植物、鳥類の住処として知られています。

このような自然動物の住処であることに加え、現地の未発達のインフラ、伐採が困難な地形などが原因で、実際に商業目的で伐採が可能な土地は広大な森林面積の中のわずか10%とされています。他のアフリカ諸国同様、森林破壊の目的な商業目的の伐採ではなく、無秩序な焼き畑や山火事などで、現地経済水準の底上げといった問題と不可分でしょう。

7位:オーストラリア

国土面積に対する森林面積の割合は17%と、世界の他の国と比較すると少ないですが、国土面積自体が広大なためオーストラリアの持つ森林面積は世界7位にカウントされています。木材ビジネス単体では年間6000億円程度、木製品や製紙業などを含めると3兆円の市場規模を持ちます。

世界8位の丸太輸出国であり、日本の木材ビジネスにおける最大級のパートナーでもあります。国外に輸出数樹種ではパインやアッシュが有名で、合板や建築資材、フローリングなどの用途に広く用いられています。

世界でも環境意識の強い環境先進国の一つであり、国内の林業ビジネスの発展と原住民や野生動物の保護を天秤にかけた施策をおこなっていることでも有名です。

8位:インドネシア

東南アジア最大の人口、約3億人を抱える経済成長目覚ましいインドネシアは、同時に世界有数の熱帯雨林保有国でもあります。日本にも年間1500億円程度のインドネシア木材が輸出されており、特にインドネシア産の合板は、日本の建築事業を支える重要な外国材として知られています。

その他東南アジアやアフリカ、南米諸国と同様、インドネシアもまた長年、経済発展と環境保全の板挟みになってきた国です。国土の開発には森林伐採がつきもので、その都度住処を追われた野生動物や現地民の訴えが深刻化していました。昨今の環境保護の声に動かされ、木材合法証明システム(SVLK)などの制度化が進んだ結果、2010年代後半に差し掛かると、驚異的なスピードで進んでいた環境破壊に歯止めがかかりました。

9位:ペルー

世界で9位の広大な森林面積を誇るペルーですが、上述のブラジル同様、アマゾン野生動物の保護や先住民の土地など、実際に木材ビジネスに割り当てられる森林面積はごく少数です。年間平均約0.2%の森林面積が焼き畑や農業使用によって失われており、環境保護と経済成長のジレンマに苦しむ国の一つとして挙げられるでしょう。

10位:インド

中国同様、インドもまた過去20年で国内の森林面積が回復した国の一つでもあります。最も、植林政策は一部の州で成功を見せているものの、北部などでは森林面積は低減傾向ににあるなど、貧富の差が激しく州ごとにインフラ開発の進み具合も異なるインドにあっては、経済成長と環境保護、そして森林資源に依存して暮らす2億5000万人に及ぶ現地住民の生活のバランスをとることが長年の課題とされてきました。

また、広大な森林資源を抱えるとはいえ、10億人を超える人口と急速な経済発展を下支えするには不十分で、中国と同じく慢性的な輸入超過の状況が続いています。

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