【2022年】ロシアの丸太原木輸出規制が日本に与える影響BLOG DETAIL

2020年の世界の原木市場流通量の13%を占めるロシアが2022年1月から丸太原木の輸出規制をおこなうことは、世界の木材市場に大きな影響を与えると確実視されています。

今までも2007年の関税値上げなど、世界の木材市場に影響を与え続けてきたロシアの動向が、今回はコロナによるウッドショックとも時期が重なり、木材市場に混乱をもたらしています。一見して日本の木材市場とは繋がりの薄そうなロシアの原木事情が、日本にどのような影響をもたらしているのでしょうか。

日本の木材自給率事情

ロシアの原木事情に目を向ける前に、簡単に日本の木材自給率についておさらいをしましょう。

元々森林資源に恵まれていた日本の木材自給率は戦後昭和30年の時点で94.5%を記録しており、国内需要のほぼすべてを国産木材で賄えるほどであったが、戦後の復興需要とそれに伴う為替・関税の変化で、国策として輸入木材が市場に大きく流通することとなりました。

プラザ合意後の急速な円高、第一次産業従事人口の減少など、内的・外的な要因が重なり合い、日本の木材自給率はその後年々低下の一途を辿り、2000年には過去最低となる18.2%を記録します。

この状況に危機感を覚えた政府の提言により、その後木材自給率は一転、じわじわと上昇傾向にあります。合板、製材、バイオマス領域での国産材の使用が功を奏し、特にバイオマスを含む燃料分野での国産材の使用率は77.4%を達成しています。2020年の木材自給率は35.8%で、林野庁は2025年までに50%まで回復させる計画を立てています。

(林野庁平成29年木材需給表を元に作成)

最も、木材自給率の回復は簡単なことではありません。そもそも日本の木材面積は国土の67%を占めるとはいえ、その中でマジョリティを占めるのは伐採できない「保安樹」で、全森林面積の4割がこれに該当します。

また、労働人口や高齢化の問題もあります。林業従事者の人口は昭和30年の51.9万人をピークに下降し続け、現在は全盛期の10分の1程度である4~5万人。うち、65歳以上の従事者の割合は25%と、長年安い輸入材を使用し続け、国産材を無視してきたツケが回ってきています。

林業従事者の育成は一朝一夕にはいきません。木を育てるのと同様、優秀な林業従事者の育成にも長い時間とノウハウをかけなくてはいけないのです。そのため、コロナ期間に発生したウッドショックのような外的な木材供給の脅威に見舞われても、簡単に右から左に国産材にシフトするわけにはいかないのです。

ロシアの丸太の原木輸出規制が与える影響

日本全体の年間木材需要7000万㎥のうち、国産材を除いた約3分の2が輸入材となり、多くは中国やベトナムに代用される南洋材か、アメリカ・カナダなどの北米材で、ロシアを代表する北洋材の割合は3.5%にしかすぎません。

ロシアが今回輸出禁止するという丸太の原木に関しても、日本の最大の輸入相手国は北米材を扱うアメリカとカナダで、ロシアは全体の1.4%に過ぎず、一見して日本市場にそこまでのインパクトを及ぼすようには見えません。

森林・林業学習館を元に作成)

 

ここでキーポイントとなるのが中国の立ち位置です。ロシアの針葉樹原木の最大の輸出国は中国で、全体の実に80%を中国への輸出が占めています。逆もしかりで、国内の木材需要が高まり続ける中国にあってロシアは最大の木材供給国として、完全に依存状態にありました。

Forest2Marketを元に作成)

 

これまでの丸太ビジネスは「ロシアが原木を中国に輸出し」「中国の安価な労働者が加工し」「日本など第三国に輸出する」というモデルによって成り立っていましたが、ここにきてロシアが原木の輸出をストップする宣言をくだします。特に日本のフローリング、建材メーカーなどはこのビジネスモデルで製造された木材製品に多く依存しており、今回の長期にわたる深刻なウッドショックの原因の一つに繋がっています。

このロシアの原木輸出禁止の決定には諸説あります「国内の木材加工従事者にお金をおとす」「国内の木材加工事業の長期的発展」といった健全なものから「ウッドショック以降国による囲い込みが行われる木材の確保」「中国への政治的牽制材料」などが挙げられています。特に、この実質的な禁輸令でもっとも割をくうのは中国の木材加工者で、露中の蜜月関係に影響を与えると言われています。

そもそも、中国の木材加工工場の多くはロシアから近い内陸部に位置していましたが、今後ロシアからの輸入がストップするとなると、中国は関係の悪いアメリカやその他欧州諸国に頼らざるをえなくなります。いずれにせよ、丸太の調達には船を使用しなくてはならず、世界的なコンテナ価格の上昇、内陸部にけん引するための輸送費等含め、世界的な木材・製材価格に深刻で長期的な影響を与えることが予想されています。

MadisonsReportによると、2021年夏にはいったん落ち着いたはずの針葉樹製材の価格はまた2021年年末になると跳ね上がり、コロナならぬウッドショックの第二波のような様相を呈しています(ただし、理由としてはロシアではなくブリティッシュコロンビア産針葉樹の輸送障害)。

参考文献:
Madisonsreport
New Zealand Foreign Affairs and Trade
ナイスビジネスレポート
森林・林業学習館(日本の木材自給率)
森林・林業学習館(林業従事者の推移)

PAGE TOP