木材製品・建材を海外から自力で直輸入する際の注意点9選BLOG DETAIL
当社は創業以来「製材・木材加工」に広く携わる会社として、独自の輸入ルートでヨーロッパなどから海外建材の直輸入もおこなっています。日本とは文化も言語も異なる国との交渉のため、当然輸入には多くのトラブルがつきもので、一歩一歩地道に解決することで輸入ルートを確立していく、まさに「千里の道も一歩から」というやりかたです。
今回の記事では、こうした我々の経験を元に、木材製品を独自ルートで輸入したいと考えたとき、どのようなポイントに注意すればよいのか、解説を行っていきたいと思います。
納期・輸送手段
英語で「Lead Time」の用語で知られる納期ですが、日本と海外とでは納期に対する考え方が異なるケースが多く、事前にこの点のチェックが必要です。
日本のメーカーや販売会社であれば、基本的にはすでに在庫しているものを購入することになるため、国内の物流にかかる時間≒納期となるパターンが多いのですが、海外の場合ここに「製造」と「日本への輸出」の2つが足されることとなります(すでに倉庫などにある既製品を購入する場合、「製造」の待ち時間は省かれます)
例えば、ヨーロッパから仕入れを行う場合、海上輸送の所要日数だけで日本までコンテナで6週間前後かかることとなります。コンテナの確保が難しい、税関で遅れが生じている、国内に到着してから倉庫に持ってくるまでの陸送、などの時間も諸々考慮すると、加えて2週間程度見ておくと良いでしょう(最も、昨今のコロナ関連でさらに遅延が目立つようになりました)。
この海上輸送にかかる日数を早めたい場合、空輸という手段もありますが、重量の見込まれるフローリングや製材、屋根材などの場合、海上輸送とケタが1つ違うレベルの見積もりになることも少なくありません。空輸を使うのは、少量輸入の場合や、カーテン・ラグなどの軽い製品、あるいは超緊急案件に限った話にするのが良いでしょう。
上記輸送手段に加え、ユーラシア大陸間であればシベリア鉄道による陸送+海運、という手段もありますが、複数の国の国境を越え関税手続きが複雑になり、かつかかる日数もコストも海上輸送と対して変わらないことから、あまりお勧めされません。
最小オーダーロット
日本向けの輸出に際し、規格の変更やオーダーメイドでの梱包が必要となる場合、既製品の購入と異なり、基本的に「最小オーダーロット」がついて回ることとなります。つまり、工場の採算をとるため、〇〇以上の発注出ないと工場を動かしません、という条件で、ものによっては1パレットから、年間10コンテナ以上、といったものまで見られます。
特に、日本の寸法、工場規格や認証関連(エフフォースター認証等)は日本独特のもので、こうした部分に対しオーダーメイド製品を作ろうとすると工場のラインを一から変えなくてはいけなくなり、大きな最小オーダーロットを要求されるケースが少なくありません。
価格と有効期限
国や地域によって価格の出し方もまちまちです。中国の業者のように、日本まで安定的な航路のある地域はCIFなどの計算のしやすい価格で見積もりをくれることがありますが、アメリカやヨーロッパのように遠方地の場合、工場渡し価格となることが多く、この場合自ら仕入れ原価計算を行う必要があります。
また、価格の有効期限や契約内容に関しても注意が必要です。規模の大きなメーカーなどでは、長期的な価格締結が期待できますが、その間に一定数の売上を達成しないといけない、といったノルマが課せられる場合もあります。
また「ウッドショックはいつまで!?木材価格高騰の原因と2022年の展望」の記事で書いた通り、昨今は国際情勢の変化に伴い、建材系の長期的な価格推移が読めない部分もあり、注意が必要になります。
関税・輸入規制・認証規制
植物である「木」を原料とする建材・木製品には、ことさら輸入上の厳しい規制が設けられています。具体的には、輸入時に以下のような規制の対象にならないかのチェックが必要です。
- 植物検疫法(害虫等のチェック。樹皮を残した丸太などに適用)
- ワシントン条約(滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、の対象ではないことの確認)
- 化審法(防腐・防虫処理プロセスに含まれる化学物質に有害なものが含まれていないか)
そのほか、日本固有の認証である(ホルムアルデヒド発散に関する)エフフォースター認証なども、海外から建材を輸入するときの論点になりやすい認証です。
また、日本ではまだ輸入時の厳しい規制などは明確には設けられていないものの、違法伐採に関する認証なども、今後欧米に倣って厳しい法制度が定められていく方向性です。
関税に関しては、1)どこの国から2)何を、輸入するかで異なります。国内での販売価格を算定するためにも、懇意のフォワーダーなどと連携し、特恵関税の対象かどうか(例えば2019年2月には日欧EPA経済連携協定が発効され、多くの建材がこの対象となりました)、そのためにはどのような書類を用意すればよいのかも事前にチェックしましょう。
品質チェック
パレットやコンテナで大量の製品を仕入れる前に、製品自体のクオリティチェックを行うことは重要です。特に、建材は施工する国の気候条件や施工の習慣などによって異なるため、いくら本国で競争力のある優れた製品であっても、日本でそれが通用するとは限りません。
そのため、可能であれば大量な仕入れを行う前に一度、少量の購入と日本での施工チェックを行い、問題ななさそうであれば本格的な仕入れに移る、という少し石橋をたたいて渡るようなプロセスが重要です。
貿易条件
海外のメーカーの倉庫から自力で日本まで持ってくる必要のある「工場渡し」、輸出側の港までは手配してくれる「FOB」、あるいは日本側の港までもってきてくれる「CFR」や「CIF」など、貿易では様々な用語が飛び交います。
輸入側にとって最も手間がかからず済むのはこちら側の港まで持ってきてもらえるCIFやCFRですが、懇意の業者がいる場合や、輸出側の手数料を削る目的などで、全て自身でフォワーダーを揃えるところからするケースも少なくありません。
基本的に、貿易条件に関しては柔軟に対応してくれるメーカーがほとんどですが、稀に「工場渡ししか認めない」といったようなメーカーも存在するため、こちらも事前チェックが必要です。
通関用書類
いざ製品・コンテナが日本に到着しても、そこから「通関」がおこなわれます。その際に書類上の不備があったり、足りない書類があると、適切な減税措置を受けられなかったり、最悪の場合積み荷を受け取れない、といったケースも発生します。
どんなケースでも「仕入書(インボイス)」や「梱包明細書(パッキングリスト)」といった書類は必要になりますし、減税措置真正の場合、どこの国で製造されたものであるか証明するための「原産地証明」などが追加で必要になります。他にも、通関時に詳細を説明するための別途フローチャートや書類を埋めるようなこともあり、所見では手に負えない部分が少なくありません。
一般的には、直輸入に際してもメーカーとの交渉は自身で行い、通関系の処理は懇意のフォワーダーに任せ必要書類の確認を事前に行ってもらう、といった「餅は餅屋」の分業体制が確実です。
支払い条件
コンテナ輸入となると、支払い額も何百万、場合によっては何千万円の世界になってきます。そうした際、支払いの条件は輸入側・メーカー側双方の重要な論点になる部分で、事前に詳細の確認が必要です。
日本と海外との貿易で使われるのは主に以下のような支払い条件ですが、それぞれにメリット・デメリットがあるため具体的にどの支払い方法が最適かは、個々のケースによって異なります(例えば前金100%支払いの場合輸入側は製品を受け取れないリスクがある)。
- 前金100%支払い
- 前金50%支払い
- L/C
- CAD(Cash against document)
- 保険会社による売掛金保証
取引実績や信用のない会社間の貿易の場合、最初は多少手間がかかったとしてL/CやCADのようにいわば「人質」(支払いが無いと積み荷を受け取れない、あるいはその逆)を用いた支払いが理想的でしょう。両者の間に信頼が芽生えてきたら、その後手数料のかからない前金払いなどに移行しても良いかもしれません。
保証・不良品対応
PL法に則り、輸入業者は海外メーカーの不良品の責任を自身で追う義務が生じることとなります(日本国内の最終消費者は、海外メーカーと直接交渉できないため)。そのため、不良品や万が一の損害賠償に関しては勿論のこと、アフターケアや製品保証、製造時の瑕疵に関しても事前に取り決めを行っておくことが重要です。
特に、瑕疵に関しては、つねに「責任の所在」は論点になりがちです。製造中についた瑕疵なのか(メーカーの責任)、海上輸送中なのか(輸送会社の責任・保険の適用範囲内)、国内に到着してからの瑕疵なのか(基本的に輸入側の責任)と、それぞれのケースによってメーカーの対応も異なります。自身の責任ではないことを明確にするため、製品が到着したら速やかに検品・不良品チェックをおこなうと良いでしょう。
直輸入に際しては、こうした様々なチェックリストを乗り越える必要があります。もし、海外建材にご興味がある方は、弊社が輸入代行の可否をお調べすることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。