【ヨーロッパの木質フローリング事情】人気の樹種・使い道に関してBLOG DETAIL

日本の年間の木質フローリング消費量は約6,000万㎡で、実はヨーロッパ全体の木質フローリング消費量とほぼ一致します。ただし、内訳を除いてみると異なる点が多く、一概にどちらも同じ市場形態とは言うことができません。また、縮小傾向にある日本のフローリング市場と比べ、ヨーロッパのそれは拡大傾向にあり、2024年までに1.3倍規模に成長すると言われています。

ウッドショック、人口減少による新築需要の減少など、日本の木材市場をめぐる環境には前途多難な数年になりそうですが、こうした中でも海外の取り組みや動向を元に学ぶべきところは多いのではないのではないでしょうか。今回は、そうした「ヨーロッパ木質フローリング市場」についての解説を行います。

木質フローリングの定義

そもそも木質フローリングの定義は世界的に画一化されたものがあるわけではなく、国ごと・地域ごとに異なる呼称を持つことに注意しなくてはいけません。

例えば日本でいういわゆる「木質フローリング」は、一枚の木から作られた「無垢フローリング」、シートや突板の下に合板を重ね合わせた「複合フローリング」、挽き板を表面に3層に重ね合わせた「3層フローリング」などが該当します。

この中で合板形式の「複合フローリング」は日本や韓国で流通量の多い独特の形式のもので、日本を除く海外で一般的に「木質フローリング」というと「無垢フローリング(Solid Wood Flooring)」または挽き板の下に2層を重ね合わせた「複合フローリング(Engineered Wood Flooring)」が該当します。

日本で複合フローリングが流通している理由はいくつかありますが、一般的に知られているのは「釘と糊で高湿度でも安定的な施工が可能」「新築文化であるため、取り外しやリノベが不要」などの気候条件や日本の社会構造的な理由で、他にも「国産の間伐材を合板として用いることができる」「国外の競争相手に参入しづらい製品のガラパゴス化」という政治的な理由まで挙げられています。

複合フローリング 3層フローリング 無垢フローリング
日本での流通量 多い 少ない 少ない
世界での流通量 極めて少ない 多い 少ない
価格 安い 普通 普通~高い
表面 シート、薄い突板 挽板(2㎜以上) 一枚もの
メリット 釘と糊で安定する 施工が早い

施工後取り外し可

高級感がある
デメリット 施工が不可逆的 湿度に少し弱い 湿度にとても弱い

重要なのは「日本の木質フローリングの定義」と「ヨーロッパでの木質フローリングの定義」は異なるという点で、ヨーロッパでの流通に目を向けるとあくまで「3層フローリング」と「無垢フローリング」が主流で、流通割合8:2程度です。

(Mordor Intelligenceを元に作成)

ヨーロッパの木質フローリング市場

ここから、具体的にヨーロッパの木質フローリング市場の構造に目を向けていきましょう。ヨーロッパ全体での木質フローリングの流通量は8,000万㎡前後で、これは日本一国の木質フローリングの年間流通量とほぼ一致します(ただし、上述のように日本特有の「合板+シート」のような木質フローリングは、ヨーロッパでは木質フローリングとはみなされないので、これを除けば日本の木質フローリング流通量はこの半分程度となる)。

日本では一般的な安価で知られる「合板+シート」の木質フローリングはヨーロッパでは流通していないため、基本的に木質フローリングの購買層はお金に余裕のある「中高所得者層」となり、東欧諸国のような低所得者国のメイン製品は㎡単価が1,000~2,000円の「ラミネート床材(低メラ床)」となります。

この事実を踏まえ、EU諸国の中で木質フローリングのメイン消費者となるのは、所得水準の高い、ドイツやフランスの高所得国となることは容易に想像できるでしょう。ヨーロッパのうち上位6位までの消費者国は人口が多く所得水準の高い「ドイツ」「フランス」「イタリア」「オーストリア」「スペイン」「スウェーデン」となります。

例えば、ドイツの統計データですとリビングに使用している床材の種類は「1位:木質フローリング」「2位:ラミネートフローリング」「3位:カーペット」となっています。

木質フローリングのメイン製造国も、基本的にはこのランキングを踏襲する形です。木材資源が豊富で労働者の単価が安いポーランドが、現状木質フローリングのメインのアウトソース国となっていますが、それ以下の順位はドイツ、スウェーデン、オーストリア、フランス、スペイン、といった形です。

木質フローリングは一見してシンプルな製品のように見えますが、木材を乾燥させ、有害物質の出ないような接着剤で剥離しない強度で固め、土足にも対応できる強度のオイル・ラッカー塗装をおこなう、など、木材知識以外にも化学・デザイン分野での総合的な知見が必要とされる産業のため、木材資源の供給源であるルーマニアやブルガリアなどはそのイニシアチブを握ることができません。

人気の樹種・使い道

経済的にも文化的にも、ヨーロッパの木材事情を語るうえで「オーク」は切っても切り離せません。木質フローリングのうちわけを見ても、ヨーロッパで消費される樹種のうち83%がこのオーク種の床材であり、2位のアッシュ、3位のビーチに圧倒的な差をつけています。

「参考:ヨーロピアンオークの特徴

とりわけ、数ある樹種の中でもヨーロピアンオークは頑丈で、土足での使用を念頭に置いたヨーロッパでの文化に広く適応する傾向にあります。

ヨーロッパで使用される木質フローリングの、生活空間への使用は全体の約7割を占めており、面白いことに全体の6割以上が「リノベーション・改築」物件への使用です。これの背景には、日本と欧米の不動産市場への認識の違いがあり、市場に出回る物件の7~8割が新築の日本と異なり、欧米の場合逆にメインの購買物件は「中古物件」となります。

家主が変わるたびに内装を改築し、新しい家族が新築のように使用するという文化をもつため、こうした「リノベーション・改築」への床材の使用がマジョリティを占めているという訳です。

この「リノベーション向け施工」であることは、コロナ環境下でもヨーロッパのフローリング需要を下支えする原動力となりました。すでにフローリングの購買チャネルは、施工業者ではなくDIYやサイト販売に移行しており、外出できなくなった一般消費者が自身で床材を購入し、家で施工する、という行動をおこしていたわけです。今後も、人口は頭打ちするヨーロッパでもリノベ需要は残り続けると言われており、これが冒頭の「ヨーロッパのフローリング市場が強固である」理由に繋がります。

このような改築向けに特化した木質床文化を持つヨーロッパでは、施工方法も日本とはことなった進化を遂げており、当社が扱うドイツ製の「Okawa Paradorフローリング」も同様に、ノリ・釘を使わずに施工できる、いつでも取り外せるリノベ向きの建材です。ご興味が有られる方は当社までご連絡ください。

Okawa Paradorの施工例(福岡県)

まとめ

さて、最後にヨーロッパの木質フローリングに関する解説のまとめです。

  • ヨーロッパの木質フローリング市場は年間約8,000万㎡
  • うち、3層フローリングと無垢フローリングの比率が8:2
  • 日本で流通するような合板形式の木質フローリングの流通は全体の2%程度
  • 中~高所得者の購入比率が高く、EUでは「ドイツ」「フランス」「イタリア」が三大消費大国
  • 製造国は「ポーランド」「ドイツ」「スウェーデン」
  • 人気の樹種は「オーク」で、全体の8割以上を占める
  • リノベ物件への使用が62%を占める

参考文献:
Global Flooring Alliance
Interconnection Consulting
Global Wood Market Info
Global Wood Trade(2014)
Global Wood Trade(2016)

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