ヨーロピアンオークの特徴 ドイツ国樹として歴史の長いフローリング材BLOG DETAIL

フローリングの種類として人気の樹種であるオーク材。頑丈で見栄えの良いことから日本のみならず各国で「高級材料」として重宝されていますが、実はオーク材には様々な種類があります。

今回は、オーク材の中でも特に見栄えが美しく、ヨーロッパでは2000年以上前から使用され続けてきた「ヨーロピアンオーク」の特徴について、詳しく解説していきたいと思います。

ヨーロピアンオークの概要

そもそも、日本で「ヨーロピアンオーク」と呼ばれる木材の正体は何なのでしょうか。オーク材には多くの種類があり、市場に流通しているものだけでも、北米原産の少し黄味がかったホワイトオーク、同じく北米原産の赤味がかったレッドオーク、熱帯・亜熱帯の原産で構造材というよりもコルクの原料などに使用されるエバーグリーンオーク等が挙げられます。

「ヨーロピアンオーク」は、広義にはヨーロッパ原産のオーク材のことで、学名Quercus robur、通称ではCommon Oak やEuropean White Oakと呼ばれるものです。ヨーロッパの中でも特にロシア以西で伐採されたオーク材をこう呼び、市場で出回る中国やロシアのオーク材とは強度や見た目が異なります。

同じオーク材でも、例えば北米産のホワイトオークとヨーロピアンオークとでは、上述のような色味の違い意外に、木目の強度(ヨーロピアンオークのほうが強い)、節の多さ(ヨーロピアンオークのほうが多い、ただしグレードによる)、タンニンの量(一般的にヨーロピアンオークのほうが多く、腐りにくい)などが挙げられます。

ただし、人間同様、木にも「個性」があり、育った場所や環境、気候条件などによってその特性は変わってきます。大量生産の製品のようにすべてのオークが同じ表情を持つのではなく、木目や節の違いが顕著で、それを楽しむことが無垢材を選ぶことの醍醐味と言えるでしょう。

ヨーロピアンオークの歴史

ヨーロピアンオークと人類の歴史は長く、何千年も前の牧畜の跡や紀元前の歴史書に登場します。きわめて長寿であることから、キリスト教では「命の木」や「永遠性のシンボル」として見なされており、今でもリトアニア、デンマーク、ブルガリアなどに樹齢1,500年を超えるヨーロピアンオークが現存しています。

Granit Oak (ブルガリアのオーク、樹齢1700年)

 

Kongeegen(デンマークのオーク、樹齢1500~2000年と推測)

 

Stelmužė Oak(リトアニアのオーク、樹齢1500~2000年と推測)

 

古くはケルト神話、ギリシャ神話、北欧神話など多くの神話学にオークの登場が見られ、聖別された樹種として崇められてきました。様々な神話でオークが「雷神」と一体となって崇められていることは偶然ではなく、一説には、大きく育ったオークの木が避雷針の役割を果たしていたから、とも伝えられています。

近世以降、活版印刷の登場以降、上述のような宗教的意味合いから、聖書の表紙に使われることが増えました。絵画や詩作を含む芸術作品には度々オークへの言及がなされ、永遠性や力強さ、聖なるもののメタファーとして使われてきました。

The Proscribed Royalist, 1651

 

ドイツの有名な詩人ハイネの一節にも、ドイツとオークを讃える箇所がたびたび登場します。

Deutschland hat ewigen Bestand,
Es ist ein kerngesundes Land,
Mit seinen Eichen, seinen Linden,
Werd’ ich es immer wiederfinden.

ドイツは永遠なり
生気にあふれた母国なり
そのオークとともに、菩提樹とともに
恒久に繁栄し続けるであろう

今でも、そのヨーロッパ文化への親和性と上述のような宗教的な意味合いから、ドイツ、イギリスなど10を超えるヨーロッパの国々がオークを国樹認定しており、自国通貨のデザインに用いるなどシンボルとして使用しています。

ヨーロピアンオークの特徴と用途

上述のような宗教的・政治的なシンボルとしてだけでなく、高硬度・高密度を持ち、耐摩耗性にも優れるなど実つ用的な長所を持つことから、ヨーロッパでは古くから、ドア、フローリング、家具、ウイスキー樽やエクステリア材など、人々の生活に欠かせない、様々な用途に用いられてきました。

樹種別のスペック

  密度(平均) 曲げ強さ 圧縮強度
オーク 0.71g/m3 95N/mm2 52N/mm2
ブナ 0.71g/m3 120N/mm2 60N/mm2
アッシュ 0.7g/m3 105N/mm2 50N/mm2
メープル 0.63g/m3 95N/mm2 50N/mm2
0.59g/m3 80N/mm2 49N/mm2
トウヒ 0.46g/m3 80N/mm2 45N/mm2
マツ 0.52g/m3 85N/mm2 47N/mm2

(参考文献:brinellhaerte

頑丈で、見栄えが良く、加工がしやすい、という建材として理想的な特性を兼ね備えたオーク材は、特に建材・家具分野での使用が顕著で、ドイツのフローリングメーカー、家具メーカーなどはオークをモチーフにした製品を多く販売しています。フローリングとしては、頑丈で凹みづらいという強みを持ち、ドイツの土足歩行文化にとっては貴重な建材の一つでした。

Okawa Parador オークフローリング

 

300年以上前に建設されたイギリスのオーク・ハウス

こうした特徴を持つヨーロピアンオークは、他の樹種と比べると日本では「高級」とみなされることが多く、特に節を持たないオークは中国など特にアジア地域で人気が高く、高値で取引されています。

価格帯 樹種名
最高級 チーク
最高級 ウォールナット
高級 ヨーロピアンオーク
高級 アコヤ
やや高級 アメリカンホワイトオーク
やや高級 グリーンオーク
やや高級 アメリカンチェリー
やや高級 アメリカンメープル
やや高級 サペリ
安価 アメリカンホワイトアッシュ
最安 レッドウッド

参考文献:Wood Price Tableを元に作成

ヨーロピアンオークフローリングを選ぶ際の注意点

さて、こうした由緒ある歴史を持つ建材としてのヨーロピアンオークですが、中国・ロシア材がメインとなり、日本では取り扱う商社も少なくなってきました。上述の通り、オークと言っても様々な種類、価格、特徴があり、建材としての用途に適したオーク材を見つけるのは簡単ではありません。

以下、日本でヨーロピアンオーク材のフローリングを購入する際、特に注意すると良いポイントについて解説をおこないたいと思います。

原産地/学名

学名Quercus roburで知られるヨーロピアンオークの原産地は、上述の通りロシア以西に生息しています。中には中国・シベリア産のオークをヨーロピアンオークとして販売しているケースもありますが、基本的に種として別物で、腐りやすさに影響を及ぼすタンニンの量、木の密度、節の多さや色合いに違いがあります。

そのため、真正のヨーロピアンオーク材を購入する場合、メーカーなどのデータシートに記載された原産地、または学名上の「Quercus robur」であることを確認することが、偽物のヨーロピアンオークを避けるための一つのキーポイントとなります。

FSC認証/PEFC認証

直接フローリングの品質に影響を与える指標ではありませんが、SDGsの観点から、FSC認証/PEFC認証の取得されている木材の選択は、持続可能な社会を保持するうえで重要なポイントとなります。

特に、発展途上国では違法伐採による野生動物の棲家の減少や将来の世代の木材不足をもたらすことから、ヨーロッパをはじめとする先進国諸国では販売者目線で違法伐採された木材を選ばないこと、が一つの責任ある行動とみなされます。

日本で取得件数の多いFSC、ヨーロッパでより人気の高いPEFC、細部に違いはあれど双方とも森林資源の持続可能性を保証する重要な認証です。

乾燥プロセス

企業機密としている会社も少なくありませんが、フローリング材の作成工程、特に乾燥プロセスなどはフローリングのクオリティ・頑丈さに大きな影響を及ぼします。そのため、可能な限りこういった、製造にまつわる情報も入手できると良いでしょう。

乾燥の方法には、じっくりと時間をかけた天然乾燥や、短期的に乾燥を終える人工乾燥、などがあげられ、このプロセスが不十分であるとひび割れの原因に繋がります。乾燥を行う理由として、伐採後の生材は水気を多く含み(含水率が高い状態)、この含水率を生活一般で使用される水準まで下げることで、フローリングのひび割れや反りを防ぐ目的を持ちます。

ヨーロッパの認証基準であるEN 13489に基づくと、出荷時の含水率は5~9%の間であることが望ましく、厳格な企業ではこの割合が6~8%といったように狭まった範囲に定められています。

PAGE TOP