ラスティック内装材をインテリアに使用するメリットと使用例BLOG DETAIL

コロナの影響で自宅でパソコンと向き合う時間が増え、それに伴って内装のもたらす心理的効果が再度見直されつつあります。特にロックダウン期間の長かった欧米諸国では内装材の売り上げが増加し、人々は自室に自然を感じられる「オアシス」を作ることにしばし夢中になりました。

日本では長らく「安っぽい」というイメージで忌避されていたラスティック材も、昨今の自然派のトレンドの広がりとともにその評価が見直されつつあります。今回は、内装材としてラスティック材(節の多い木材)を使うことのメリットと、合わせやすいインテリアスタイルについて解説をおこないます。

ラスティック材とは

「ラスティック」とは、飾り気のない、素朴な、ラフな、という意味の英語のRusticから由来した言葉です。転じて、木材・インテリア業界では「節の多いもの」「木目の目立つもの」「白太を含むもの」などを指し示す際に度々使用されます。

ラスティック材とクリーン材の比較

一般的に、節を多く含むもの、白太を含むようなラスティック材は、含まないものに対して市場に流通する総量が多いことから、安く取引されます。

そのため、過去にはラスティック調の材料=安物、というイメージがありましたが、限りある木材資源の活用、節を活かした自然派のインテリアデザインの流行などもあり、徐々に評価が見直されつつあります。逆に、この素朴なイメージを体現するために、あえて古木のような着色をおこなうようなメーカーも最近では少なくありません。

ラスティック材の有無の与える心理的影響

特に、「ラスティック」な印象を与えるのに一役買うのが節の有無です。ヒノキ化粧板を用いた京都大学農学部は研究テーマ「パネルのイメージに及ぼす節の影響」において節の有無によって観測者に与える心理的影響について以下のようにまとめています。

節ありのパネルの与える心理的印象
「自然な」「素朴な」

節なしのパネルの与える心理的印象
「感じの良い」「上品な」「すっきりした」

こうした上で、同研究では、欧米各国では節ありのパイン材などが内装材として多く用いられていることから、国による差異、あるいは部屋の大きさによっての違いなどもあるのでは、と締めくくっています。

「過ぎたるは及ばざるがごとし」の示す通り、特にインテリア・デザインの分野ではバランス感覚が非常に重要で、個性が無さすぎる建材もありすぎる建材も避けられるべきとされています。

木材建材を語る際によく引き合いに出されるワードに「不揃いさ」「予測のできなさ」というものがあり、専門用語では「1/Fゆらぎ」と呼ばれます。心理学的に人間が心地よさを感じる、いわゆる人工物ではない自然物(炎や木の年輪等)に含まれるパターンのことで、ゴッホの絵画のようなこのフラクタル模様は、人間の脳に心地よい音色を奏でると言われます。

年輪は自然界に存在する「不揃い」の美

ただ、それでは何でもかんでも不揃いにしたら良いのかと言われるとそういうわけでもなく、実際に節を増やしすぎた室内の印象は「汚らしい」「雑な」印象を見るものに与えるとされ、あくまで他の内装材・家具との調和を考えたうえで、適度な使用にとどめることが重要です。

(「木材と感性」を参考に作成)

ラスティック材にあうインテリアデザイン

ラスティック材そのものの持つイメージがすなわち「自然な」「素朴な」というものなので、基本的にはそのイメージを壊さないようなスタイルでのデザインをおこなうことが良しとされています。

ただし、部屋全体のイメージが人工的なものであっても、アクセントとしてラスティック材を使用する機会も増えてきており、「必ずしもこうしなくてはいけない」という画一的な決まりごとがあるわけではありません。

以下に紹介するインテリアスタイルは、ラスティック材を用いたデザインの中でも昨今特に人気を博しているもので、部屋のコーディネートの参考になるのではないでしょうか。

三重県「アクアイグニス様」施工例

カントリースタイル

「カントリースタイル」自体の意味は「田舎風の」「牧歌的なスタイルの」という意味で、総じて田舎暮らしを体現できるようなインテリアのデザインに使用される言葉です。

特に「英国風の」「南仏風の」という限定的なワードがつくこともありますが、必ずしも洋風にしなくてはいけないのではなく、字義そのものの表しているのはスローライフであって、和風のスタイルであっても問題はありません。

コロナの影響で特に家にいる時間が長くなったことから、都心を離れ田舎に移住する人や、そうでなくても自室を改造して「田舎っぽく」見せるようなインテリアの方式が再燃するようになりました。

上述の「素朴な」「田舎らしい」というワードに表されるように、使用する建材は「石」「レンガ」「木材建材」「丸太」など、基本的にレトロな(20世紀前半で手に入るようなもの)物質で、家具などもそれとなく「懐かしさ」溢れるようなデザインが良いでしょう。

また、丸々一室をカントリー調に誂えるのが難しければ、「モダン・カントリー調」と呼ばれるように、部屋の一部のアクセントとしてラスティックな内装材・家具を用い、部分的に田舎らしさを表現するような工夫も可能です。

ナチュラル・テイスト

ラスティック材の持つ「自然な」イメージを最大限にマッチさせたインテリアデザインを模索するのであれば、ナチュラル・テイストと呼ばれるデザインが適しています。上述のカントリースタイル同様定まった概念はありませんが、極力自然界に存在する物質(木材、石、観葉植物など)を使用することがカギとなります。

コンセプトとしては、ストレス社会からの脱却が特にうたわれており、都会の一室に「リラックスできる空間」を演出することです。テレワークが増え、パソコンに一日中向き合ったような生活スタイルが常態化すると、どうしても人間本来の持つ自然の生活からはかけ離れてしまうため、清涼剤として内部空間を自然なものにかえよう、という試みです。

東京「人生100年社会デザイン財団様」施工実績

されど内装ですが、自然材の持つ力を侮ることはできません。木材を内装材に取り入れることは、視覚的にも(木材は有害な紫外線を反射せずリラックス効果をもたらす赤外線を多く反射する)、触覚的にも(温かみをもち、心地よい弾力を持つ)、嗅覚的にも(針葉樹材に含まれるテルペンなど)、人体に好影響を与えることが科学的に立証されています。

参考文献

  • 色彩学の実践(渡辺安人)
  • パネルのイメージに及ぼす節の影響(増田稔、仲村匡司)
  • 木材と感性(仲村匡司)
  • 木材なんでも小事典(木質科学研究所)

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