トランプ関税:木材が軍需産業に不可欠な理由BLOG DETAIL

トランプ大統領が「木材はアメリカの軍需産業にとって必要不可欠」として関税を設けたことが波紋を呼んでいます。

近代戦争や軍事と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは鋼鉄や石油、あるいはハイテク電子機器かもしれません。しかし、現代においても「木材」は重要な軍需資源のひとつとして使われ続けているのです。

本稿では、木材がなぜ各国の軍需産業にとって必要不可欠な資源なのか解説をおこなっていきます。

木材と軍事の長い歴史

本ブログでは過去数回にわたって「木材と戦争」というテーマを取り上げてきました。

歴史を遡れば、戦争と木材は切っても切れない関係にありました。古代の戦車、帆船、攻城兵器から、第二次世界大戦の飛行機や塹壕補強材に至るまで、木材は常に戦場を支えてきました。日本が誇る大川家具も、元をたどると室町時代の船大工に遡ることができ、その用途は軍事目的でした。

木材と戦争の歴史

最も、その仕様方法は時代に応じて変遷を遂げてきています。

古代(紀元前~5世紀頃)

古代において木材は最新鋭軍事の基盤でした。戦車や槍、盾などの武具はもちろん、大規模戦の主力となる船や攻城兵器も木材で構築されていたわけです。ギリシャの三段櫂船やローマの攻城塔は木材なしでは存在し得ず、兵站や陣営の建設にも不可欠でした。木材は「武器」であり「輸送手段」であり「防御施設」でもあり、戦争に直結する万能な資源として活用されていました。もっともこうした万能性から、木材資源の乱獲を招き、数千年前から既に「森林破壊」がエジプトやローマ帝国内でおこりはじめています。

ローマ時代の攻城兵器

中世(5世紀~15世紀)

中世の戦争でも、木材は防御と攻撃の両面で重要な役割を果たしました。石造りの城塞が普及しはじめたため、木材は主に城門や足場、防御柵に使用されるようその役目を変えました。当時の攻城塔や投石器といった兵器も木製で構築され、長弓やクロスボウといった射撃武器も木材なしでは成立しません。軽量で大量生産が容易という利点を生かした木材の有用性は中世においてなお健在で、国同士で木材資源をめぐる戦いが相次ぎました。

中世の城塞と木材

近世(16世紀~18世紀)

大航海時代を経て、海軍力が国力を左右する時代になりました。この時代において、木材は艦船建造の核心資源となります。ガレオン船など大型帆船は膨大な木材を必要とし、国家は森林資源の確保を戦略的課題としました。イギリスの軍歌にはオークでできた船をたたえる歌詞が入っています(この時期の乱獲でイギリスは今でも森林不足・・)。銃器の普及によって銃床が大量に木材で生産され、大砲の台座や輸送用の馬車も木材に依存するようになります。兵士の食料・火薬輸送に使う木箱や樽も木製で、補給線を支える重要資材でした。

大航海時代の帆船

近代(19世紀~第二次世界大戦)

産業革命後も木材は軍需資材として活躍しました。もっとも、その役目は防御拠点や攻撃兵器というより、兵士や軍事インフラのサポート役に回ります。鉄道輸送の枕木や塹壕の補強材として大量に用いられ、第一次世界大戦の戦場は「木材消費の戦場」でもありました。第二次世界大戦では、銃床や担架に加え、イギリスが開発した木製爆撃機「モスキート」が象徴的存在となり、木材の軽量性と加工性が戦闘機の設計に生かされました。(※ちなみにこの時期、大川でも木質飛行機の製造の試みが行われています)。木材が鉄やアルミと共存しながら戦争を支える基盤となった時代でした。

第一次世界大戦の塹壕

冷戦期(1945~1990年代)

核開発と宇宙開発が進んだ冷戦期、木材は兵器開発の主役の座こそ降りたものの、直接的な建材以上の役割を担うようになります。ICBM再突入体やロケットモーターのノズルには、木材繊維にフェノール樹脂を含浸させた複合材がアブレーション材として使われました。木材の微細な繊維構造が工業的に応用されはじめたわけです。また、兵舎や仮設施設、輸送用パレット・木箱など従来の用途でも軍需に不可欠でした。この時期、HDFをはじめとする合成木材が革新的な進歩を遂げ、軍需の世界でも建材の世界でも木材の使用方法が劇的に変化していくこととなりました。

(※もっとも、ベトナム戦争などジャングルを主戦場とした戦いではレーダーに映らない木材は兵器の主役でもありました。アメリカ兵を苦しめたのは、竹などでできたジャングルの古典的なブービートラップです。)

ベトナム戦争

現代の戦争における木材の用途

こうして、歴史を通じ役割を変化させ続けてきた木材ですが、現代の軍事活動で木材はどのような使われ方をするのでしょうか?トランプ大統領がいう「木材の軍事使用」のハイテクアメリカ軍の中での使用例を見ていきましょう。

軍事施設の建設

兵舎、倉庫、司令部などの一時的または恒久的な施設では、木材が今も変わらずコンクリートや鉄材と並ぶ基本資材です。これは、人々の家屋が未だに木材で建築されることをイメージすれば分かりやすいかと思います。特に迅速な建設が求められる前線拠点では軽量で扱いやすい木材が重宝されるのです。

現代の軍事施設

輸送・梱包資材

武器、弾薬、医療物資を運ぶ木箱やパレットは依然として木材が主流です。頑丈さと修理のしやすさ、そしてコストの低さから、他の素材では完全に代替できていませんし、これからも難しいでしょう。

塹壕や防御陣地の補強

第一次世界大戦以降、塹壕の必要性が高まりましたが、現代でも塹壕や臨時のバリケード構築に木材は欠かせません。ウクライナ・ロシアの戦争において、主役は華やかな戦闘機でも戦車でもなく、縦横無尽に張り巡らされた塹壕網とそれをかいくぐって攻撃するドローンとなっています。

国家安全保障と木材供給

このように、ハイテク化が進んだ現代の戦争においても、木材はなお国家安全保障と直結する資源でもあり続けています。

ここで冒頭のトランプ大統領の声明「木材供給を軍事インフラの観点から重要視」に戻ってきましょう。実際、米軍は施設建設に年間数十億ドル規模で木材を調達しており、また木材を基盤にした新技術の開発にも余念がありません。

現在は木材を用いて風力発電所や人工衛星が作られる時代、安価で大量供給可能な木材は、国家の長期的な安全戦略に欠かせない研究対象であるわけです。

もっとも、林業において人材育成やインフラの整備は一朝一夕にはいきません。日本でも同様に、木材自給率を高めようという試みがなされ続けていますが、これは単なる価格安定性の目的だけでなく、長期的な国家戦略の礎にもなっていくわけです。

日本の誇り、大川家具

各国に家具造りの歴史があるように、日本も由緒正しい木工職人技術を誇ります。480年前の船大工の伝統を継ぐ大川家具は、日本有数の木工家具の町。日本のみならず、世界トップレベルの家具メーカーを相手に戦っています。

大川家具の職人技術

伝統
大川家具の製品

精巧
大川家具の工房

伝統と革新を持つ大川家具にご興味のある方は、まずは弊社ショールームに足をお運びください。職人の技術と伝統の美しさを直接ご体感いただけます。

お問い合わせ

PAGE TOP