EXPO 2025 大阪・関西万博 UAEパビリオン向け木材輸入物語4BLOG DETAIL

第六章:チュニジア製造拠点作り

万博の開会式まで残り1年半。パビリオンの建設、内外装のデザインや工事、そして什器製作を考慮すると資材調達は一日でも早く終わらせなければなりません。可及的速やかに我々は440万本のナツメヤシの枝(※植物学的には「ナツメヤシの葉軸」という呼称が正しいですが、読者の方への分かりやすさを重視し、「ナツメヤシの枝」という名称を本稿では用います)を揃えなくてはいけないわけです。

問題は、チュニジアにはナツメヤシの枝が大量にあれども、それを検品する人も加工する人もいないということです。440万本のナツメヤシといっても、どんな枝でもいいわけではありません。緑のまだ生きている葉軸が混ざっていないか、曲がりすぎていないか、強度に問題はないか、そうした検品を潜り抜けた製品のみを日本に送らないと、全て無駄になってしまいます。

さて問題は、チュニジアの農村の多くにはこうしてナツメヤシの枝を商業利用するための文化が存在しないことです。元々は燃やすか家畜の餌にすることが多いという、地に落ちたナツメヤシの枝。つまり、ナツメヤシの枝を加工する工場は勿論、製造のための道具も建物もこのチュニジアの砂漠地帯にはほとんど存在しないのです・・・・。

2023年8月。夏の終わりとともにナツメヤシの枝は地面におち、チュニジアの広大な大地を覆います。現地ではそれを冬までに片づける風習があるため、この出荷の機会を逃すと次に収穫できるのは翌年になります。

440万本という途方もない量のナツメヤシの枝を万博の開幕式までに調達するためには、2023年の秋のうちに少なくとも200万本は調達しておくことが必須条件となります。ナツメヤシの枝収穫のタイムリミットが迫る中、我々は急増で「ナツメヤシ検品・作業工場」をチュニジアの農村に設置することを決めました。一夜城ならぬ、一夜工場の完成です。

こうした即興の「ナツメヤシ検品・作業工場」が合計6つ、現地のサプライヤーさんの助けもあってチュニジアの農村に完成しました。古い建物の内装を活かし、中に電動ソーを誂えたシンプルな造りですが、検品と不揃いの枝を揃える作業場としては十分です。

南国のイメージの強いチュニジアですが、通年で温暖なわけではありません。夏が過ぎれば秋が到来します。夏の間は「シャルギ」と呼ばれる熱風がサハラ砂漠から吹き付けますが、秋には地中海からの北風が砂漠を駆け抜けます。

北風の吹く時分。ナツメヤシ収穫の期限が迫る中、我々は日本への出荷を間近に控えた200万本のナツメヤシの枝を検品するため、二度目のチュニジア出張を敢行します。

オンライン通話やAIの発展により、人々のコミュニケーション手段は豊富になりました。福岡にいながらチュニジアとビデオ通話して、検品や作業の指示をおこなうことが可能です。しかしその時代においてなお、対面での話しあいが不可欠な場面があります。それは「パッション」です。通話越しには伝わらない、検品の機微や我々の覚悟を知らしめるため、我々は何度も地球を半周してチュニジアの奥地に足を運ぶのです。

出荷を控えた膨大なナツメヤシの枝の確認。乾燥度合いや長さ、曲がり、そしてカビを避けるためのコンテナ内の湿度対策。こうした大小含めたテーマを喧々囂々、農村に誂えた即席の工場で日がなく議論します。

時に衝突しあい、時に助けあい・・。現地でのコミュニケーションを通じて、サプライヤーを含む我々のナツメヤシの枝に対する解析度は大幅に高まることとなります。

「この細さは許容できる」「この曲がりは許容できない」

こうした議論を一日中交わしながら作業を進め、日本へ出荷されることとなるナツメヤシの枝がチュニジアの農村にうず高く積まれていきます。

 

我々は最後のコンテナへの搬入までを今回のチュニジア出張で確認し、今回の出張を終えました。

ナツメヤシの柱としての強度を確認し、残りの240万本を調達し、無事期限までに間に合わせる。前途には課題が多く残されていますが、帰路、窓の外に広がる広大な砂漠を見ていると、こうした仕事の不安もどこかにかき消されていく思いがしました。

「続く」

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