2024年の木材・家具市場のトレンド 5選BLOG DETAIL
AIの台頭やパンデミック、戦争に法規制の改正など、令和を迎えて後我々を取り巻く環境は劇的に変わりつつあります。そんな中、木材産業を取り巻くトレンドも毎年のように移り変わっており、新しい情報のアップデートが欠かせません。
今回はプロセス井口が選定する2024年の木材トレンド5選を紹介いたします。
持続可能性と規制強化
2024年末に欧州で適用される「森林破壊防止規制」や、農林水産省が2025年中の改正を目指す「クリーンウッド法」など、世界の木材市場は間違いなく「持続可能性」及び「違法伐採の排除」の動きに向かっています。
木材そのものの合法性だけでなく、牧場などを運営するために伐採された土地なども欧州の森林破壊防止規制の対象となり、今後は衛星写真などを用いて企業側の「説明責任」が増していく状況にあると言えるでしょう。厳しい罰則を含む同規制への対応を図る必要が企業側でてくるため、書類処理の手間などにかかるコスト増が予想されます。
また、消費者のニーズも「クリーン」「エコ」などのイメージ(特に西欧諸国)に移り変わっており、クリーン材であることの木材認証(FSC認証など)の重要性が増していくとされます。
戦争の行く末と輸出入ボトルネック
2022年に引き起こされたロシアによるウクライナ侵攻は人々の耳目を集めました。ヨーロッパの木材供給地であるウクライナ、ベラルーシ、ロシアからの木材が途絶えたことは、欧州だけでなく世界中の木材価格に混乱を招き、コロナ禍と相まって「ウッドショック」を招いたことはまだ記憶に新しいでしょう。
ウクライナ-ロシア戦争は泥沼化し、以前として解決の糸口が見えない状況ですが、ウクライナは林業の回復をはかり2024年には伐採量を大幅に増やすことをウクライナ通信を通じて発表されました(参考:International Market)。
一方、昨年末に勃発したイスラエル紛争は未だに海運業に暗い影を投げかけており、特にスエズ運河経由での物流が停止され(2024年2月現在)、アジアと欧州の海運パイプラインが分断されたことはコスト・納期の面で日本の輸入業者にとって大きな痛手となりそうです。
未だに世間を騒がせるウクライナ紛争とイスラエス紛争ですが、目が離せない状況は続きそうです。
人工木材・新世代集成材の重要性
2024年1月、スウェーデンで世界初とする木材を基盤とした大型風力発電が操業を開始しました。「LVL(単板積層材)」という極めて強度の強い合板を用いて製造されたこのタービンは、従来の鉄型の風力発電よりも二酸化炭素排出を90%削減できるとされ、コンクリートの代わりの素材として期待されています
他にもCLT(直交修正板)やOSB(配向性ストランドボード)など、間伐材の有効利用および強い強度という強みを活かした木材をベースとした集成材の大型建築などへの使用が期待されています。
また、大阪万博では木材を用いた新素材や持続可能材などが各国のパビリオンなどで使われる予定であり、面白い新技術にお目にかかる良い機会かもしれません。
木材インテリアへの回帰・バイオフィリック
バイオフィリックという、ストレスや創造性と木材インテリアの関係性が取りざたされるにつれ、個人宅だけでなく、商業施設やオフィスなどへの内装材としての木材の価値が見直されることとなりました。
バイオフィリックとは、そもそも人類の「自然に即して生活していた」という性質にのっとり、木材や動物など自然の光景を本能的に求める本質のことで、単調な壁やインテリア、建物の中で暮らすことは心理的に大きなストレスとなるとされています。
例えば、木材の持つランダムパターン(1/Fのゆらぎ)、肌触り、匂い、音の響きなどは人間にとって心地よいものが多く、企業としてもこのような自然の性質をオフィスに取り入れることで作業効率の改善を図っています。実際に、効率化、ストレス軽減などの観点からプラス効果が報告されています。
また、今まで高級材とされていた節なし、白太なしといった木材から、「節あり」「白太あり」といった骨太で自然に即した木材の使用が北欧を中心に人気を博すようになってきています。これら「ラスティック材」と呼ばれる木材は、市場流通量も多くエコや持続可能の観点からも、伐採可能量の限られた節無し材よりも今後の木材市場を担う存在になっていくと言えるでしょう。
家具の大量消費材から高級志向・デザイン重視への回帰
YoutubeやInstagramなどのSNS媒体を通じてハイエンドな家具が拡散されたことから、大手家具メーカーによる大量生産、大量消費の時代から一転、家具のデザインや技術に付加価値を求める「高級志向路線」に注目が集まりつつあります。
Research&Market社の見通しによると、2024年から2029年までに現在のハイエンド家具の7000億円市場が二倍の1兆5000億円に到達する見込みで、特に「自分にしかないインテリア空間」の創造が今後のカギであるとされています。この傾向の背景には、人々の生活パターンの細分化(地方在住、都会在住、異なる家族構成等々)が後押ししていると言われ、判を押したような一辺倒の家具の購入から、「自分だけの家具」の製作に志向が移っていくと言えるでしょう。
奇しくもこの高級志向、一点物志向への回帰は伝統的な家具作りの持つ「その人や家に適した制作物」というコンセプトにあったものと言えます。大量消費財としての家具から、そのスペース、その大きさ、その人の価値観にあった家具・内装材の付加価値が今後高まっていく見通しです。
その意味で、福岡県大川市のように職人芸の内装材・家具材作りに強みを持つ地域にとってこうしたトレンドは追い風となるかも知れません。プロセス井口では、個々の商業施設・個人宅に適した大きさ、デザインの内装材を伝統的な大川職人のグループで製作・搬入することを得意としています。
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