【2024年末適用】EUの木材新ルール:森林破壊防止規制とは!?BLOG DETAIL

2023年6月、EU審議会で森林破壊に関連する製品規制法:「Regulation on Deforestation-free products(以下EUDR)」が発行されることとなりました。大企業への適用は2024年12月30日(中小企業はその後半年間の猶予期間)で、この適用を持って同時に2013年から継続されていた木材規制法「EU Timber Regulation(以下EUTR)」が失効することとなります。

この法律は、世界規模で行われている森林保護、持続可能な社会の実現のためにおこなわれる施策で、特に違法木材のEU市場からの締め出しを念頭においた規制です。EUに木材や木材由来製品を持ち込む企業は、使用されている木材や原材料が森林破壊を惹起するものではないことを表明する必要があります。

2024年現在罰則の設けられていない日本のクリーンウッド法とは異なり、EUではこの規制法を犯した企業に対して「罰金(売上の4%とも)」「物品の押収」「貿易許可の取り消し」など厳粛な措置がおこなわれます。

さて、元々EUにはEUTR(木材規制法)という法律がありましたが、2024年12月により厳しいこのEUDRに置き換わることによって何が変わるのでしょうか?また、具体的にどのようなプロセスで企業側はこのデューデリを実行する必要があるのでしょうか?

違い1:適用される製品カテゴリ

現行法のEUTRとEUDRの大きな違いの一つ目は、適用される製品です。現行法では、規制対象品はあくまで「木材及び木材製品」に限定されていました。つまり、原木は勿論、木製家具、木製建材(HDFやフローリングなど)、木製フレーム、枕木など木材の使われているあらゆる製品から、木材を元にして製造される紙・パルプ由来のあらゆる製品が含まれます。

(※ただし、「竹由来の製品」「書籍」「パンフレット」「ソファ」等、一部適用外の製品も存在しています。)

一方、2024年12月に適用開始されるEUDRにおいては、既製品のリストが増えることとなります。今までの木材や木材由来製品だけでなく、「牛、カカオ、大豆、パーム油、コーヒー、ゴム、および皮革、チョコレート、タイヤ」といった、森林破壊の原因となりうる農作物なども対象品に加えられるわけです。

HSコードでいうところの4411(繊維版)、4412(合板、ベニヤ)、4414(木製の額縁)、4419(木製の食卓用品)、等が含まれます。対象の範囲は「付属書Ⅰ」に含まれるすべての製品群で、詳細に関しては公式文書を参照してください。

違い2:違法木材の摘発から「森林破壊を防ぐ」へ

現行法はあくまでEU内に「違法伐採された木材」を持ち込ませないための施策であったのに対し、EUDRは更に一歩ひいた目線で「製品を製造する過程で森林が破壊されなかったか」に着眼します。

そのため、上述のように「森林を破壊して作られた農作物」などもその規制の対象となるわけです。特に、南米諸国では焼き畑などによって森林面積が大幅に減少していることから、このような措置が講じられたといえます。

(C)Flicker_A_Yee

違い3:トレーサビリティと材料責任

トレーサビリティは「追跡可能性」と訳され、本ポイントがEUDRの発行における一番の企業泣かせで難所だと言われています。事業者は該当する製品や原材料の原産地を追跡し、かつ「地理的情報」を提示することが定められています。この負担によって、製造業者は原材料の調達の手間が増えることになると懸念の声が高まっています。

地理的情報の提供にあたっては、衛星写真などを用いたサービスが既に新規ビジネスとして登場しつつありますが、企業側も手探りで法に抵触しないラインを模索中です。

Due Deligence Statement(デューデリジェンス宣言書)

この「森林破壊をおこなった製品ではない」ことの証明は、付属書Ⅱのデューデリジェンス宣言書によっておこなうこととなります。デューデリジェンス宣言書の内容としては以下のような内容を盛り込む必要があります(注:以下の日本語文は原文の意訳になります)。

  1. 事業者の名前、住所、そしてEORI事業所番号(該当製品の輸出入を行う場合)
  2. 製品のHSコード、説明文、製品名、学術名、数量など
  3. 原産地、及び生産地の地理的情報。牛を原産とする製品の場合、その全ての飼育施設。
  4. 既存のデューデリジェンスを用いる場合、そのデューデリジェンスの参照番号
  5. 署名

監査員の調査

現行のEUTRやその他認証制度においても同じことが言えますが、現実問題で全ての製品の原産地をEUの監査員が調査するのか、というと疑問符が付きます。

もしEUに「不当な木材」や「森林破壊の結果もたらされた原材料」が持ち込まれたことが監査員によって突き止められたら、上述の通り「EU内での売り上げの4%の罰金」や「輸入停止措置」など厳しい罰則が適用されることとなりますが、現実的に監査員がそこまでアクティブに一つ一つの製品のチェックをおこなうことは余り現実的ではないとも言われています。

とはいえ、EUには木材の原産地を追跡するような「木材探偵」の職業が登場しつつあり、違法伐採や森林破壊に対する締め付けは厳しくなる一方であり、このような制度の厳罰化は間違いなく抑止案にはなることでしょう。EUの20%を占めるという違法伐採木材や、それを取り巻く犯罪組織を駆逐するために、今後もEUは厳しい措置をおこなっていくことが予想されます。

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