日本人の知らない!ヨーロッパの有名な森ベスト6BLOG DETAIL

日本では森林の役割として、木材生産や渇水や洪水を防止する水源涵養機能、山地災害の防止機能、娯楽としての自然環境を提供するなど、様々な役割を果たしています。ヨーロッパではこれらに加え、神話にも多くの樹木が登場することから、信仰の対象ともされてきました。クリスマスの時期に飾られるクリスマスツリーや、ユーロ硬貨のデザインに樹木が使われていることからもヨーロッパの人々の樹木信仰が感じられると思います。

面積的には小さなヨーロッパですが森林面積は1,001百万ヘクタール(ロシアを含む)であり、森林が多いイメージのある北中米の706百万ヘクタールなどの他の地域と比べてもヨーロッパは森林面積が多いことが分かります。そんな森林面積の多いヨーロッパで有名な森林はどこなのでしょうか?今回はヨーロッパで有名な森6選をご紹介します。

ドイツ シュヴァルツヴァルト

ドイツの森林面積は1,140万ヘクタールで、国土の32%を占めています。ドイツの木材は建築用として日本にも多く輸入されていたり、伝統工芸品のくるみ割り人形など、様々な部分でドイツと森林の関わりが見られます。その中でもシュヴァルツヴァルトは林業が発展しており、18世紀には船材用の丸太が造船産業の中心地であったオランダに向けて輸出されていました。クリスマスツリーなどにも使われるドイツトウヒという針葉樹が多く植えられており、それらを上空から見ると黒く見えることからドイツ語で「黒い森」を意味するシュヴァルツヴァルトと呼ばれています。

第二次世界大戦の後、ドイツの高度経済成長による工場や車の排気ガスによって多くのシュヴァルツヴァルトの森林が枯死しました。このように、酸性雨の被害が大きく見られていることでも知られており、1980年以降、緑の党と呼ばれる環境政党が台頭したこともあり、2016年に森の約6万4千ヘクタールが生活圏保護区として宣言され、2017年ユネスコによって承認されました。

フランス オルレアンの森

オルレアンの森はフランスのロワレ県にあるフランス最大の森林です。オルレアンはロワール川の近くにあるフランスの古都であり、百年戦争の末1429年にイギリス軍からジャンヌ・ダルクによって解放された街として知られています。

フランスは国土面積の28%が森林であり、そのうちの60%がナラ・ブナ類の広葉樹林で占められています。100年以上にわたってフランスの森林は拡大し続けており、現在ではフランス国土の31%を占めています。この理由として、戦後の農業革命と国家森林基金による植林政策の結果であると言われています。

多くの画家で有名なフランスですが、自然をありのままに描いた自然主義的な風景画や農民画を描いたバルビゾン派という絵画の一派があることをご存知ですか?落穂拾いで有名なミレーも「バルビゾンの七星」の一人として知られています。産業としての森林との関わりの他にも、フランスのように芸術面での関わりもヨーロッパでは多く見られることが分かります。

ポーランド・ベラルーシ ビャウォヴィエジャの森

ビャウォヴィエジャの森はポーランドとベラルーシの国境にまたがる原生林で、ヨーロッパ最大の森林地帯です。

それと同時にヨーロッパに残された最後の原生林と言われており、貴重なヨーロッパバイソンの生息地としても知られています。
ポーランド側は1979年、ベラルーシ側は1992年にユネスコの世界遺産に登録されました。

ヨーロッパで唯一人の手が加えられていない森林のため、様々な種類の動植物を観察することができます。そんなビャウォヴィエジャの森ですが、近年、保護を主張する環境保護活動家と伐採を主張する森林当局で対立が起きた時期もありました。森林当局が2016年に害虫の拡散を防ぐことを理由に伐採を開始しましたが、これに対し、環境保護活動家に加え、欧州連合も激しく反発しました。欧州司法裁判所はポーランドの森林当局側が環境法に違反しているとの判決をくだし、ポーランド側は2018年に伐採を中止しました。

ポーランド・ベラルーシ国境に広がるビャウォヴィエジャの森(Photo by Frank Vassen

オーストリア ウィーンの森

オーストリアのウィーン郊外に位置する森であり、森の東側は森林公園となっているためたくさんの訪問者が訪れます。オーストリアは北海道と同じくらいの狭い国土面積、低い森林率でありながら環境に配慮した持続的な森林利用によって先進的な林業を行っています。また、オーストリアの山岳地域は険しい地形が多く森林の総蓄積は日本の4分の1ですが、日本の木材供給量の半分以上の丸太を生産しており、木材生産量は日本と比べると非常に高いことも分かります。

ヨハン・シュトラウス2世が「ウィーンの森の物語」を作曲したことで有名になり、森の中にはベートーヴェンの散歩道と呼ばれる散策コースがあります。この散策コースを歩きながら、ベートーヴェンは交響曲第6番田園の2楽章「小川のほとりの情景」を作曲したとも言われています。途中にはブドウ畑やワイン酒場もあり、絶景を眺めながらベートーヴェンもワインを嗜んでいたかもしれません。

フィンランド ヌークシオ国立公園

フィンランドは森林の多い国としてもよく知られており、ヨーロッパで一番森林が多い国でもあります。また、フィンランドの森林は針葉樹林であり、国土面積に占める森林の割合は約74%であり、総面積は2,280万ヘクタールにもなります。

ヌークシオ国立公園はヘルシンキから約1時間で行くことができ、フィンランドで気軽に自然を感じることができる観光地としても人気です。日本では映画「かもめ食堂」のロケ地としても有名です。フィンランドでは持続可能な林業を目標に掲げられており、プラスティック容器が使われることが多い化粧品容器に100%木材由来の素材を使用したりする取組も行われています。

photo by /kallu

イタリア カンシーリョの森

イタリアは国土の3分の1にあたる920万ヘクタールを森林が占めています。しかし、イタリアは海のイメージの方が強く、森林というイメージをあまり感じない人が多いのではないでしょうか。
そんな森林のイメージがあまり持たれていないイタリアですが、ヴェネチアから北に100km進んだところに、200年ぶりにオオカミの生息が確認されたことで知られるようになったカンシーリョの森という森があります。

水の都、ヴェネツィアが近いこともあり、カンシーリョの森の豊富なブナはヴェネチア艦隊の船のオールに加工されて使われていました。ヴェネチア共和国建国以降、部分的な伐採を行い一部の樹木を残すことで後継樹を育てる「傘伐施業」や、15から18年おきに劣勢木の間引き伐採を行い質の良い樹木を残すことで、森林内にギャップをつくり樹木の成長の促進に繋げています。このように500年以上にわたり森林の管理がされています。

photo by Toprural

まとめ

森林のイメージが強い国の森林や、そうではない森林まで様々な国の森林があったと思います。日本と森林面積は変わらないのに、様々な工夫により木材生産量が日本より高かったりと、森林の育て方次第でも様々なところで違いが出てきます。

どこの森林を見ても環境問題によって引き起こされたり、過度な森林伐採による森林破壊が問題に上がっています。林業として私たちの生活を支えてくれている森林ですが、同時に動植物たちにとっても大切な場所です。色々な対策は行われていますが、森林に関する問題がさらに深刻になる前に動いていくことが大切だと思います。

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