世界の「木製家具」輸出ランキングと日本の立ち位置BLOG DETAIL
年々取り扱い額が上昇しつつある「木製家具」の世界市場、主要なプレイヤーはアジアとヨーロッパ諸国で日本はまだまだ伸びしろのある分野と言えます。今回の記事では、年間4兆円とも呼ばれる巨大な市場を持つ世界の「木製家具」に焦点を当てて解説をおこないたいと思います。
世界の市場の中の木製家具とは 歴史とトレンド
人類史は木材との共存の歴史であったと言っても過言ではありません。建材、武器、炊飯器具、農具、など、身近にある木材から切り出された材料を元に、人類は道具を開発、人間らしい豊かな生活を実現するに至りました。炭素の塊であり、加工がしやすく、身近にありながら適度な強度を持つ木材という材料は、産業革命以降も変わらず我々の身近なパートナーであり続けており、そのプレゼンスが色あせることはありません。
その加工のしやすさと入手しやすさ、および人体に適度な柔らかさと固さを兼ね備えた木材は、人間の生活に欠かせない「家具」の中にも多く使用されています。ベッド、テーブル、本棚、クローゼット、椅子など、身近な家具を見回してみても、木材が用いられたものを見つけることはそう難しくないのではないでしょうか?実際に、非木材の材料が多く登場するに至っても、手軽さ、加工のしやすさ、環境への負荷、人体への影響など様々な観点からみて、木材を総合的に上回る材料が登場しないのが現実なのです。
そのような理由から、現在においても「木製家具」の世界的な需要は成長傾向にあります。全世界で年間に輸出入される木製家具の総量は300億$(約4兆円)で、コロナやウッドショックなどの煽りを受けて一時期売り上げが落ち込んだものの、長期的なトレンドを見たら年売上+5%右肩上がりで成長しています。木製家具の主要な生産国は主に「アジア」と「ヨーロッパ」に二分されており、ドイツやオランダ、イタリアなどが主要なプレイヤーであることから、単なる労働集約的なマーケットではないことが見て取れるでしょう。
世界の木製家具輸出ランキングとその内訳
世界の主要な木製家具輸出国に目を向けると、上述のアジアとヨーロッパのプレゼンスが際立っていることが伺えます。全世界の輸出量のうち、実に約4分の1を中国からの出荷が占めています(逆に輸入国のうち4分の1をアメリカが占めている状況)。
もっとも、上位陣にはアジアの発展途上国(中国、ベトナム、インドネシア)が軒を連ねている一方で、ドイツやイタリア、オランダ(11位)といったヨーロッパの先進国も存在感をアピールしています。特に、ヨーロッパの先進国は最新技術と伝統を上手く融合させ、木製家具の高単価化にシフトが成功、近隣諸国だけでなく北米やアジアを相手に高級木製家具の販売戦略をおこなっています。
1位 中国 | 8.97 B$ |
2位 ポーランド | 3.13 B$ |
3位 ベトナム | 3.1 B$ |
4位 イタリア | 2.12 B$ |
5位 ドイツ | 1.55 B$ |
6位 インドネシア | 1.02 B$ |
7位 インド | 0.891 B$ |
8位 リトアニア | 0.842 B$ |
9位 マレーシア | 0.733 B$ |
10位 トルコ | 0.600 B$ |
上位圏外 日本 | 0.0267 B$ |
(参考資料:OEC 2021年資料)
オランダやデンマーク、北欧諸国は取扱額こそ少ないものの、国産材と伝統技術やデザイン、ブランド力を融合させた見事な販売戦略をおこなっています。「スカンジナビアンスタイル」「バウハウス」などデザインの本流を抑えることで先進国市場でも一定のプレミアムをもって受け入れられるようになっており、事実日本でも北欧の木製家具が広く受け入れられているでしょう。
日本の木製家具は世界で勝負できるのか?
律令国家の時代から長い木工文化をもつ日本ですが、残念ながら木製家具の国際市場で活躍しているとは言いづらいでしょう。上述の通り、世界の木製家具輸入ランキングではベスト30位にすら登場しない状況で、輸出額でいうと同じ輸出立国のライバルであるドイツの100分の1程度の輸出量しかありません(年間40億円程度)。
諸説ありますが、これまで外材の輸入に依存してしまっていて国産材を用いた「Made in Japan」の木製家具流通経路が整備されにくかった点、同じく国産材では大きなロットが確保できなかった点、海外市場との規格の違いや森林認証の違い、北欧メーカーなどと比べ家具企業の海外ブランディングに出遅れた点、などが挙げられます。
もっとも、過去の木製家具の輸出量を見るとじわじわとその出荷額を伸ばし、過去10年で実に3倍の輸出額に成長していることが読み取れます。まだまだランキング上位のドイツやイタリアはおろか、近隣の台湾や韓国にも出荷額ベースでは負けている状況ですが、地道な民間努力が実を結び、少しづつ海外販路が成長してきた結果とも言えるでしょう。
事あるごとに触れていますが、木材産業は息の長い産業で、一朝一夕で結果がでずらい代物といえます。官民一体となって林業の川上から海外販路の拡大までおこなっていける基盤を構築し、良い日本の技術と文化を世界に広めていけるよう望んでいます。