ドイツの住宅事情と間取り:メンタリティとライフスタイルを反映した住空間BLOG DETAIL

国境を越えた材やサービスの移動が増加するにつれ、日本においても北欧風、南欧風といったヨーロッパの住宅デザインを模したデザインもよく見られるようになってきました。

家は、地域の気候や人々の生活スタイルと直結しています。日本の高温多湿な気候から木造建築が発達したように、冬の寒さが厳しいドイツでは中世からバロック期にかけて蓄熱性の高い石造り建築が広まりました。また、土足文化のドイツでは耐久性の高いオークやブナなどの広葉樹、タイルなどが昔から床材としてよく使われており、靴を脱ぐスタイルが浸透してきた現在でもその傾向は継承されています。

そこに住む人々の暮らしぶりは、家の作りや間取りに如実に現れるものです。今回は、ドイツ人のメンタリティや生活スタイルを絡めながら、ドイツの住宅事情と間取りの特徴を紹介いたします。ドイツ風の住宅インテリアの参考にしていただければ幸いです。

1. ドイツ人のメンタリティと住宅市場

ドイツ人は古い物を大切にします。中古品は家や車に限らず、家具や日用品まで幅広く取引され、週末にはフリーマーケット(Flohmarkt)が各地で開催されます。人々の中古品に対する抵抗感は少なく、品と状態が良ければ新品の3分の2程度の高値で取引されることも珍しくありません。そこに垣間見えるのは、新旧よりも品質が大切であるというドイツ人のメンタリティです。「良い物は古くなっても良い物である」という考え方が根付いているのです。

古い物に価値を見出すメンタリティは、ドイツのアルトバウ(Altbau:築年の古い中古住宅)とノイバウ(Neubau:新築〜新古住宅)市場を見るとよく分かります。アルトバウには正確な定義はなく、建物の歴史的価値や建築様式によって判断は異なるものの、一般的には第二次世界大戦以前から直後(〜1948年頃)に建てられた古い住宅を指します。


左:ノイバウ、右:アルトバウ

ドイツ連邦統計局のレポート(2004年)によると、ドイツの住宅のうちアルトバウ(1948年以前に建設されたもの)は全体の27.9%。1949年から1990年までに建てられたものが全体の61.0%で、1991年以降に建設されたものが約11%とされています(※1)。日本の建築年代別住宅ストックと比較してみると、1950年以前に建築された住宅が4.9%、逆に1991年以降に建築された住宅が34.7%と比率が逆転しており、ドイツで古い住宅が多く維持されていることが分かります(※2)。

ドイツ連邦統計局(Destatis) “ Wohnsituation in Deutschland im April 2002”(ドイツ)、 国土交通省住宅局「 長持ち住宅の手引き」(日本、アメリカ、イギリス、フランス)をもとに作成

(注)ドイツは1948年まで

ドイツに古い建物が多い理由は、古い物を大切にするドイツ人のメンタリティに加え、

  • 地震がなく、自然災害による倒壊の危険がほぼない
  • 石造りで長持ちする

という地理的要因と建築様式も関係しています。住宅は一定年数使ったら壊して作り変える消耗品ではなく、頑丈に作ってずっと使い続ける耐久品であるという考えがベースにあるのです。ドイツの大都市は第二次世界大戦で爆撃を受けて破壊されてしまったため、欧州他国に比べると戦前の建物の比率は低くなっているものの、現存数は日本の5倍以上にのぼります。

建物の新古があまり重要でないことは、アルトバウとノイバウの家賃にも表れています。ドイツ連邦統計局の調査(2021年)によると、2015年を100とした場合の家賃(光熱費など付随費用を含まない賃料=Nettomiete)は、アルトバウで108.5、ノイバウで108.7となっており、ほぼ差がありません(※3)。

2. ドイツの家の広さと間取りの特徴

ドイツの家に足を踏み入れると、空間がゆったりしていると感じます。ドイツ連邦統計局のレポート(※4)によると、住宅の広さの平均は92.1㎡で、住人ひとりあたりの居住面積は47.7㎡(2021年末時点)。日本と比較してみると、一戸あたりの平均延べ床面積(※5, 2018年)は92.06㎡とほとんど差がないものの、ひとりあたりでは25.6㎡(14.06畳を㎡換算)とドイツの半分程度となっています。ドイツの家が広々と感じるのは、天井が高いことに加え、ひとりあたりの居住面積が広いことが理由と言えるでしょう。

ドイツの古い町並み

ドイツの住宅の間取りはリビング・ダイニング(Wohnzimmer)+キッチン(Küche)+トイレを含むバスルーム(Badezimmer)+寝室(Schlafzimmer)が基本的な構成で、居住面積に比例して寝室(子供部屋、仕事部屋などと表記される場合もある)数が増えていきます。

部屋割りとしてもっとも多いのがキッチンとバスルームの他に3〜4部屋から成る住居で、「3ZKB」や「4ZKB」と表記されます。リビング・ダイニングも1部屋と数えるのがドイツの特徴で、3ZKBは日本で言うところの2LDKとなります。1〜2部屋は単身者やカップル向け、3部屋以上はファミリー向けの住居です。

ドイツ連邦統計局(Destatis) “ Wohnbestand in Deutschland 2021” をもとに作成

間取りは、建物の古さ(アルトバウかノイバウか)や家の広さによっても異なります。例えば新しい住宅にはキッチンとリビングが一体となったオープンキッチンタイプが多いのに対し、古い住宅ではキッチンがドアで仕切られた独立タイプが一般的です。独立タイプは料理の臭いがリビングに漏れにくい利点がありますが、料理中に外の様子が分かりづらいのが難点でもあります。近年オープンキッチンが主流になっているのは、料理中でもリビングにいる人とのコミュニケーションが取りやすいことをメリットと考える人が多いからでしょう。ドイツ人のホームパーティー好きや人を招待することが好きな国民性が間取りに表れているとも言えます。

家の広さは、バスルームの設備にも影響を与えます。単身〜カップル向けのコンパクトな住宅では、バスルームに湯船が備えられていないことがほとんどです。スペース的な問題に加え、日々の入浴をシャワーで済ます人が多いのもこのような間取りが採用されている理由と考えられます。3部屋以上のファミリー向け住宅になると、湯船を備えた大きめのバスルームに加えて、トイレとシャワーのみのバスルームがもう一つ付くレイアウトが一般的です。

3. ドイツの「家」に求めるられるもの

ドイツの家えらび・家づくりでもっとも重要視されるのは、居心地です。ドイツの家を見ると、家で過ごす時間を快適なものにすることに多くの労力が費やされていることを感じます。ドイツ人が無類の旅行好きであることからも分かるように、仕事以外のリフレッシュの時間が生産性高く働くことにつながると考えられているからです。外の自然を感じられる大きな掃き出し窓、バルコニーやテラスも、自然を好むドイツ人がリラックスするために欠かせない要素。多少日常生活や通勤・通学が不便になっても郊外の家を好む人が多いことにもそれが表れています。

また、家に人を招く機会が多いので、家の外観や内部の見た目の美しさ、ゲストの呼びやすさやゲストにとって心地良い空間であることも重点項目となっています。ドイツ政府が推進する住宅の省エネルギー化と併せ、居心地・見た目・エネルギー効率の3点のバランスが取れていることが、ドイツでの「良い家」の条件と言えるでしょう。

【出典・参考】
※1:Statistisches Bundesamt(Destatis). “ Wohnsituation in Deutschland im April 2002”. 2002年.
※2:国土交通省住宅局. 「 長持ち住宅の手引き」(PDF).
※3:Statistisches Bundesamt(Destatis). “ Ergänzende Angaben für die Bauwirtschaft”. 2022年11月.(PDF)
※4:Statistisches Bundesamt(Destatis). “ Wohnungsbestand Ende 2021: 43,1 Millionen Wohnungen”. 2022年7月.
※5:総務省統計局.「 平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(PDF). 2019年9月30日.

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