ブロックチェーンが木材流通業界を変える!?意外な関係性についてBLOG DETAIL

多くの暗号資産に用いられるブロックチェーン技術は、暗号技術を用いたP2P(対等の取引者による)取引用テクノロジーで、仮想通貨の枠にとどまらず、金融、不動産、アートやサプライチェーンといった我々を取り巻くあらゆるビジネス環境に広がる可能性を孕んでいます。

今回は、昨今流行りのブロックチェーン技術が、仮想通貨の枠組みを超えて、将来我々木材業界に与える影響と展望について述べていきたいと思います。

ブロックチェーン技術とは

ブロックチェーン関連のベストセラーの一つ、「Blockchain Revolution(ブロックチェーン革命)」の著者であるドン・タプスコット氏は、ブロックチェーン技術について「お金、証券、知的財産、そして私たちのアイデンティティのデータといったあらゆる価値をP2P(ネットワーク上)で交換することを可能にする技術」というように端的に表現しています。

仮想通貨などへの利用で知られるブロックチェーン技術ですが、実際には銀行や証券、不動産やアート、スポーツ球団のファンサービスなどあらゆる分野で応用がはじまっており、1993年にインターネットが普及し始めたのと同じ勢いで世界を変えつつある、と言われる所以です。

ブロックチェーンの仕組みを1から理解することは本稿の趣旨ではないので簡単な紹介にとどめますが、以下の7つの「原則」をもってブロックチェーン技術は従来のインターネット上のビジネスと異なる価値創造をおこないます。

  • Networked Integrity(ネットワーク保全)
  • Distributed Power(権力の分散)
  • Value as Incentive(インセンティブ)
  • Security(セキュリティ)
  • Privacy(プライバシー)
  • Rights preserved(権利の保持)
  • Inclusion(インクルージョン)

従来型のインターネットビジネスは(例えばクレジットカードを想定してみましょう)、銀行のような中央集権型の機関がその元締めとなって管理を行うため、情報の一極集中、元締めへのセキュリティ攻撃に対するいたちごっこ、データ流出や消失リスク、などの問題を孕んでいました。一方で、ブロックチェーンシステムでは取引が個々のユーザーによっておこなわれ、その取引記録が暗号技術によってさながらチェーンのように連なって、過去にさかのぼっての改竄が不可能なつくりになっているわけです。

その技術を利用したビットコインやイーサリアムなど仮想通貨は、日本でも投資家の購入意欲を煽ってプチブームとなりましたが、上述の通り仮想通貨はブロックチェーンを活かしたシステムの一つに過ぎず、実際のブロックチェーンの可能性はさらにビジネスの世界に広く適用可能なわけです。

ブロックチェーンの流通業への応用

「過去の取引情報をチェーンのように記録し、改竄ができない」「透明性」「個々のプレイヤーの情報保護」といったブロックチェーンの特徴は、複雑化した現代社会のサプライチェーンシステムと親和性と持ち、早くから物流業界の耳目を集めていました。

ブロックチェーン技術を応用して製品の製造工程を川上から川下までトラッキング可能にすれば、偽造品の混入を防いだり、不良データの改ざんを防いだり、認証資格の問い合わせを容易におこなえたり、と従来のサプライチェーンシステムでは困難であった管理体制をより簡易に、柔軟におこなえるようになる、というわけです。

大手コンサルのデロイト社は「ブロックチェーンを用いた物流イノベーション」と題された論文の中で、こうしたブロックチェーン技術を用いた流通管理が特に効果を発揮しやすい業界として「食品」「高級ブランド」「貴金属」「医療品」などを例としてあげています(フェアトレード、偽造品防止、等)。

日本でも、すでに日本IBMや楽天グループ、大日本印刷、三菱ケミカルなど大手企業が続々とブロックチェーン技術を利用したサプライチェーンの構築に動きを見せており、実際に水産物のトラッキングなど実験的に導入されている分野も見られます。

食の安全のため、生産地のトラッキングは消費者の課題です

木材ビジネスへの応用

このように、製品のトラッキングを容易にし、偽造や不良品の流通を防ぐシステムとしてのブロックチェーンを木材流通に活用しようという動きも世界各国で進められています。

いち早く木材流通業界にブロックチェーン技術を導入したのはFSC森林認証で知られる森林管理業界でしょう。かねがね形だけの認証で実際にはマーケットに非認証材が多く出回ってしまっているという批判をうけていたFSCでしたが、改竄不可能で許可を得たユーザーに原産地情報の公開されるブロックチェーンプラットフォームを作成、現実世界でのさらなる可能性追求のためパイロット試験をおこなっています。他にも、南米の森林伐採問題などに立ち向かうため、各NPO団体がこの新しい技術の導入に目をむけています。

また、ブロックチェーン技術の木材流通ビジネスへの応用は、長い間おこなわれていた偽造業者(書類やデータなどの)とのいたちごっこに終止符をうつだけでなく、その過程で行われていた膨大な量のデータ収集、事務処理手続き、それに費やされる人件費をスリム化し、流通工程の費用を減らすという希望も見られています。ウッドショックと慢性的な木材高騰にあえぐ住宅市場にとって救世主となるかも知れません。

これら技術の応用によって、「森林破壊の起源は奈良時代!?森林伐採の歴史と木材資源争奪戦」の記事で紹介したような世界の違法な森林破壊に歯止めをかけ、市場に良質な木材だけが出回るための重要なスキームとなることにも期待がもてます。他にも、南米の国などでは違法伐採を監視し、認証済みの木材のみの流通を図るため、国家が主体となってブロックチェーン技術の取入れをおこなっています。

木材ビジネスの世界では、経済、貿易の複雑化とともに一般消費者に手の届きにくい流通プロセスが出来上がりつつありましたが、ブロックチェーン技術の応用は、こうした複雑化した情報を再び我々の手に与えてくれる助けになるのではないでしょうか。今後の技術の発展に期待が向けられます!

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