なぜ心地よい?木製インテリアがもたらす心理的・身体的効果BLOG DETAIL
家のインテリアを検討する上で重視される要素として「機能性」や「デザイン(見た目)」が考えられますが、意外と影響が大きい要素として見落とすべきでないのが、インテリアが「心身に与える効果」です。よく知られるのは、「色」が人の感情や印象に影響を与えるとする色彩心理学の考え方。また、選ぶ「素材」も居住空間の居心地を大きく左右します。
床面や家具に多用されるインテリア素材の代表格=「木」で考えると、木質インテリアが作るナチュラルな雰囲気は、「やすらぎ」や「落ち着き」と言った心理的イメージに繋がっています。今回の記事では、内装材としてもっとも身近な「木」をインテリアに使った場合の心理的・身体的効果と、木製インテリアを用いるメリットについて解説します。
木製インテリアが心身に与える効果〜なぜ「心地よい」?
家の内装には多くの無垢材や木目調の資材(木質系加工材料)が使われます。特に床材や家具にそれらの素材が好んで使われるのは、木が与える落ち着いた印象が、一日の大半の時間を過ごす家の内装として適しているためと考えられます。木製インテリアが作る独特の心地よさ、これは以下の3点に起因します。
- 目にやさしい
- あたたかい
- 木目のゆらぎ
目にやさしい
晴れた日に長時間屋外で過ごしたり、水面や雪山の反射など強い光を受けると、目にまぶしさや疲れを感じることがあります。これは紫外線が目にダメージを与えることが原因です。反対に木のフローリングや木の家具に囲まれた部屋で同様の経験をすることがないのは、木には目に有害な紫外線を吸収する(反射しない)という働きがあるためです。
太陽の光は、波長の短い方から紫外線(UV)、可視光線、赤外線に分けられます。紫外線と赤外線は目に見えませんが、紫外線を目から吸収すると眼精疲労の原因になることが分かっています。目から入った紫外線が活性酸素を過剰に分泌させることで角膜がダメージを受けると、急性的には目の充血・痛みや結膜炎、慢性的には白内障や翼状片などの症状が引き起こされることがあります。
また、紫外線のうちUV-B(280-315nm)は、浴びることでDNAが損傷し、免疫機能が低下したり皮膚がんの原因になるなど生物に有害であることが報告されています。
木は他の素材(ここではコンクリート、アルミニウム)と比べて紫外線(〜400nm)の反射率が低く、目に入ってくる光をやわらかくやさしいものにしてくれるという特性があります。
また、天然の木の表面にある細かい凹凸は光を散乱して一方向への反射を弱めるので、無垢材を使った床材や家具が多い空間ではまぶしさ(目への負担)が軽減されるという効果もあります。
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あたたかい
木がふんだんに使われた部屋に「あたたかい」印象を持つのは、暖色が基調になっているためです。
目(視覚)から入った色情報は脳内で体験や知識と結びつき、見た物に物理的な温度がなくても「あたたかく」感じたり「冷たく」感じたりする効果があります。波長が短い色(紫、青、水色)は冷たく、波長が長い色(赤、橙、黄色)は暖かく感じる傾向があり、これが「寒色」と「暖色」と呼ばれる色の寒暖感です。寒暖だけでなく、色は大小(膨張色・収縮色)や前後(進出色・後退色)の感覚にも影響を与えます。
<可視光線の波長>
また、無垢材や木質系建材は肌に感じる体感温度もあたたかいと言えます。なぜなら、木は他の素材と比べて熱伝導率が低い(熱がゆっくりと移動する)からです。コンクリートと比べると合板で10倍・天然木材で約13倍、漆喰と比べると合板で約5倍・天然木材で約6倍熱伝導率が低く、物理的にもあたたかい素材なのです。
<建築素材の熱伝導率>
木目のゆらぎ
木のインテリアが心地よさを与えるのは、木目が「1/fゆらぎ」効果を持つことも一因であると考えられます。
「1/fゆらぎ」とは、規則性と突発性が人間に心地よいバランスで生じるリズムのことで、人の心拍の間隔、ロウソクの炎の揺れ、ホタルの光り方など自然界に数多く存在します。「1/fゆらぎ」は、神経細胞が発する電気信号の間隔など生体リズムの基本になっていることが「1/fゆらぎに関する国際シンポジウム」をはじめとした研究で明らかにされており、そのため人間が感じる快適性と深く関わっていることが分かっています。
木目(木の年輪)は同じ方向に並びながらも年輪幅には違いがあり、その微妙なバランスが人の感覚を心地よく刺激します。そのため、住空間に木目を活かした内装や家具を多く用いることで、「退屈ではないがやすらぐ」感覚につながるのです。
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木製インテリアを用いるメリット
木のインテリアは、見る人に「落ち着いた」「あたたかい」「リラックスできる」印象を与えます。木とひとくちに言っても樹種によって色や木目に違いがあるので、選ぶ素材によってさまざまなイメージを作り出すことができます。
例えば、膨張色である白に近い明るい木を床材に使えば空間を広く、収縮色である黒に近い暗めの木を使えば重厚感や引き締まった印象の部屋にすることができます。また、床材の木目や板幅に狭いものを選ぶと軽快さ・にぎやかさが出、広いものを選ぶとゆったりした高級感が生まれます。「1/fゆらぎ」であげたように木目はパターンが均一でないので、統一感を出しながらも素材が持つ表情の違いを楽しむことができるのも木が持つ魅力のひとつです。
子供への心理的・教育的効果
木は、素材への安心感から子供用家具やおもちゃやにもよく使用されますが、木製インテリアは心理的・教育的に子供に良い影響を与えることが教育現場からの声としてあがっています。
文部科学省が発表した、木製の学校用家具についての調査結果によると(文部科学省「木材を活用した学校用家具の事例集」)、「香りがよい、感触が良い、ぬくもり・温かみがある、色がよい、木目が目に優しい、空間が明るくなる」といった、子供の発達に重要な視覚・嗅覚・触覚など五感に対する効果、さらに、「使い込むほどに味わい深くなる」ことや、シックハウス症候群対策として有効であることが木製家具を採用することのメリットとしてあげられています。反面、デメリットとしては「傷が付きやすい」点がありますが、これが逆に子供たちの「家具を大切にする心を育成する」面で適していることも指摘されています。
学校用机・椅子は1962年頃から資材調達やメンテナンスのしやすさからスチール製が急速に普及し、2004年に学校用家具のJIS規格に「合成樹脂成型品(プラスチック)」が追加されたことによりプラスチックの利用も進みました。しかし最近では、環境保護や物を大切にする心を育むという観点から木製に戻す動きが強くなっています。林野庁によると、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」制定時(2010年)には8.3%だった公共建築物の床面積ベースの木造率が、2019年には13.8%に上昇しています。
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