DIY大国のアメリカ・カナダと日本のDIYリフォーム市場の違いBLOG DETAIL

日本DIY・ホームセンター協会による調べでは2020年のホームセンター市場の売り上げは4兆2680億円で、コロナ禍による巣籠需要の相まって初めて売り上げ4兆円の壁を越えました。

ユーチューブや雑誌、テレビなどを見ても「自分でリノベ」「DIYリフォーム」といった文字が踊ります。実際にコロナ下で外出制限の中、自宅を模様替えしてみた、というお父さん方も少なくないのではないでしょうか。

さてこのDIYブームですが、果たしてコロナの後も続くのでしょうか?今回は、日本の10倍のDIY市場規模を持つアメリカやヨーロッパの市場との比較を交え、日本の市場との違いについて詳しく解説を行っていきたいと思います。

DIYリフォームとは

DIYとは英語の「Do It Yourself」の頭文字の略語であり、日本語ではもともと「日曜大工」などの用語で知られていました。いわゆる、プロなどに頼まず自分でなにかを作ることで「シャワーヘッドの交換」「照明の交換」といったライトなものから、「園芸・ガーデニング」「壁紙の張替え」「フローリングの補修や張替え」といった大掛かりなものまで含まれます。

リクルート社の「2017年度 賃貸契約者動向調査」によると、賃貸物件でDIYリフォームをおこなったことのある層の割合は年々増加しており、2017年度時点で全体の18.9%と、2014年度の11.4%から8%も上昇しています。

もっとも、どこまでをDIYリフォームと呼ぶかについては資料や統計データによって異なるのではないでしょうか。例えば同リクルート社資料によると「シャワーヘッドの交換」や「照明の交換」といったようなライトなものも含まれており、欧米で人気のあるヘビーなDIY、例えば「壁紙交換」や「収納の設置」などの経験者は10%以下にとどまります。

世界の中の日本 DIYリフォーム市場の現状

コロナによる巣籠需要の増加もあり、世界的なDIY市場の売り上げは2019年時点で約60兆円に達し、計測以降で最も高い水準にあります。うち、DIY市場が最も高いのは北米(アメリカ・カナダ)で、全世界のDIYの売り上げの半分以上を占めています。

次いでヨーロッパ、アジア、アフリカや南米と続きます。国別の人口一人当たりのDIYへの出費を見てみると、一位はアメリカ人で一人頭年間10万円程度をDIYに費やしており、日本人は約25000円くらいです。

一見して、表からは日本のDIYリフォーム水準も欧米と並んで高い水準にあるように思えますが、総売上から逆算するに、恐らくこれは欧米のDIYには含まれていない「家庭用品」「ホームインプルーブメント」「家電」「ペット用品」など、ホームセンターで売られているものが全て含まれているのではないかと予想します。

日本のホームセンターの総売上3兆4000億円のうち、欧米で呼ばれる「DIYリフォーム」のカテゴリに該当すると思われるのは「DIY用具」「インテリア」「園芸・エクステリア」の約1兆5000億円程度で、実際には人口一人当たりのDIYへの出費額は一人年間1万円くらいではないでしょうか。

対して、世界のDIY市場における人気のカテゴリは「塗装・ペイント」を筆頭に「DIY用品・工具」「照明関連」「建材」「屋内庭園」などで、割と日曜大工の中でも大規模でヘビーな製品が多いことが見て取れます(参照:Do-It-Yourself Home Improvement Retailing Market Report)。

欧米のDIYショップを訪れてみても分かる通り、大型の床材や工具、ログハウスやレンガなども売っており、DIYショップに行けば一から家が建てられる、と言われるほどです。

ドイツのホームセンターの床材販売部

恐らく、ホームセンターの売り上げ全体をDIYの売り上げとしてカウントしてしまっているのかも知れませんが、家電やペット用品など、DIYとはいいがたい製品をここから除外すると、日本の純粋なDIYとしての市場規模は4分の1くらいになるのではないでしょうか。

日本と欧米 DIYリフォーム市場の違い

北米やヨーロッパのDIY市場に日本が追い付くのか、と言われると、恐らく日本独自のDIY市場の発展は遂げるものの、北米・ヨーロッパのように「床から壁からなんでも自分で施工」型になるのは難しい、あるいは相当の時間がかかると思います。

以下に、日本でDIYリフォームが今後伸び悩むであろういくつかの理由について述べていきます。

建材の違い

まず、建材自体の欧米と日本との違いが挙げられます。

例えば、壁の違いを見てみましょう。日本の住宅は、賃貸・一戸建て含め「壁紙」の使用が主流です。対して、欧米で主流なのは、後述の通り家主が変わったらすぐに模様替えができる塗装です。

フローリングはどうでしょう。日本の住宅は、家主が生涯同じであることを前提とし、取り外ししにくい施工方式ですが、欧米はやはり家主が変わることを前提とした「クリック式」の施工です。アメリカやドイツでは全体の3割程度の消費者がフローリングをホームセンターで購入し、1から自分で施工します。

建材ではありませんが、部品を買ってきて自分で組み立てるというDIY形式の家具も、元々はIKEAが世界的に広めた文化です。

元々住宅の寿命が長い欧米の住宅では、建材は家主とともに変わるものと考えられており、内装材は総じて「組み立て・取り外し」が楽であることが前提に作られていました。このことは、素人がリフォームをするにあたってもアドバンテージとなり、特にコロナ中で家に籠った人々が暇な時間を使って自分で内装の施工をおこなうようになりました。

対して、日本の建材は、湿度環境や虫食いなどの外的な要因も考慮し、「プロが取り外しを前提とせずに」組み立てる類のものです。現在、ホームセンターなどで素人でも組み立てられるような建材が徐々に増えては来ていますが、まだ素人が日曜大工気分で手を出せるものは多くありません。プロセス井口で取り扱っているOkawa Paradorはドイツ生まれのリノベ建材のため、以下のように日曜大工施工も行えます。

賃貸文化の違い

欧米の賃貸文化は、個々人がハウスオーナーと直接交渉し、礼金を浮かせるシステムです。特にインターネットの普及とともに、家主も借り手も代理店を介さずに直接コンタクトできるケースが増え、それぞれ賃貸契約書フォーマットに自身でサインをして、瑕疵などの責任を持つ、というやり方をします。

当然、2~3年住めばいくらきれいに使っていても床や壁などが汚れるのですが、そういった場合基本的には「借り手の責任」でラフな原状復帰をおこないます。具体的には、上述のようなDIYショップで塗装道具や修理道具を買ってきて、自分で退去前に直していくのです。

一方で、日本の場合では不動産会社などの代理人を介した賃貸契約が主流で、退去の際のクリーニングや、原状復帰が必要となったときの業者などは会社側が独自にアレンジします。必然、自身でホームセンターで買ってきた道具で原状復帰、という文化が根付くことは少ないでしょう。

騒音

実際に床の張替えや棚の設置など、工具を用いる大掛かりなDIYを行ったことがある人は分かると思いますが、DIYリフォームをする際には「削ったり」「叩いたり」するので、基本的には大きな音が発生します。特に、電ノコを使用したり、ネジ回しを用いる際には注意が必要でしょう。

こうした「大きな音」が発生する日曜大工文化に、日本のご近所さんはあまり寛容ではありません。アメリカのように周囲1kmに誰も住んでいないような家でもなければ、イタリアのように毎晩だれかがパーティをしていて騒がしい文化でもなく、特に閑静な住宅街などでは軽々にこうした音の発生する日曜大工には精が出ずらいでしょう。

考え方の違い

欧米のDIY物件などを間近で見ると、やはり粗が目立ちます。巾木がでこぼこしていたり、断面が見えたり、コードがはみ出していたりと、日本のプロの目から見ると「全然ダメ」と思う人も多いでしょう。

世界水準で見ても日本の㎜単位にこだわる建築技術は芸術の域に達していますし、当社もしばしばそのような職人文化を誇りとし、作業を要する現場をお手伝いすることもあります。

対して、DIY文化はあくまで素人の日曜大工です。欧米の人々はこのような「でこぼこの巾木」や「はみ出たコード」に一々苦言を呈することをあまりしないのです。工事業者を呼んでも、酒を飲みながら作業したり、雨で休んだり、と日本では到底考えられないようなことが起こりえる欧米文化では、そのくらいの「施工ミス」は誰も気にしないというわけです。

欧米のDIY施工でよく見るミス

今回のコロナで自分で内装の改築を増えたことが、こうした日本の「完璧主義的な」文化の変化の兆しになるのかどうかが、今後のDIY市場の未来を占う試金石になるのではないでしょうか。

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