木材は高度な調湿装置!木質内装材を使うことの健康上のメリットBLOG DETAIL

冬の乾燥、夏の高温多湿など、我々が不快に感じる湿度環境は、単に不快なだけでなく、人体にとっても長期的に見れば内臓疾患などにつながる悪影響をもたらします。室内の湿度環境は極力人体にとって心地よい数値に保たれる必要があり、これを自動的に調整してくれるものとして古くから「木質建材」が有名です。

単に見栄えが良いだけではなく、健康面でも我々を支えてくれる木質系内装材の魅力について今回は説明したいと思います。

木材の持つ調湿効果とは

そもそもどのような理由で、木材は調湿効果を持つのでしょうか。木材を構成する主な細胞はセルロース、ヘミセルロース、リグニンの3細胞壁で、これらが繊維状に絡み合って強靭な木材を構成しています。

その中のセルロースとヘミセルロースは水分子を引き寄せる水酸基を持ち、これが、多湿であれば水分を吸収し、乾燥状態であれば水分を放出する働きをおこないます。

内装材(床材や壁材)として切り取られた木材は、この調湿効果としてのセルロース・ヘミセルロースを保持し続けるため、これが俗に「無垢材は呼吸をしている」と呼ばれる所以です。

木質建材をふんだんに使用した内装の施工例

 

なぜ高湿/乾燥は人体に悪影響なのか

夏はじめじめ、冬は乾燥し不快な環境が続くと、精神的なストレスとなることは実体験で容易に想像がつくと思います。実際に、こうした人間にとって「不快な」室内環境は、人体にどのような健康上の実害をもたらすのでしょうか?

そもそも人間にとって理想的な相対湿度環境は40~60%の間と言われており、それを逸脱する湿度環境では様々な病気が引き起こされるリスクが高まります。乾燥状態では粘膜や肌が傷つきやすく、そこからウイルスの感染や皮膚炎を招きます。逆に多湿状態ではバクテリアやカビの繁殖を招き、アトピーやアレルギー、その他内臓疾患の原因となります。

極度な乾燥・・
ウイルスの拡散、鼻・喉の粘膜の炎症、ドライアイ、アトピーの悪化、内臓疾患等

極度な多湿・・
ノミ・ダニ・カビの繁殖、アトピーやアレルギーの原因等

そのため、こうした夏の高温多湿、冬の低温乾燥を防ぐために夏は除湿器、冬は加湿器などを用います。一方でこうした装置を使わずとも、木材が自然に持つ調湿効果というものが高く評価されています。

木材の持つ自然の調湿効果は様々な研究機関で有効性が証明されています。有名どころでは、京都大学によっておこなわれたビニール壁紙と木材壁の比較実験でしょう。

ビニール壁紙と木材、それぞれを壁に使用したミニハウスで中の湿度を比較したところ、前者のビニル壁紙では雨の日に25~90%という乾燥~多湿の湿度のぶれが一日で起きましたが、木材板を張ったミニハウスでは室内の湿度環境が約55%前後に保たたれました。

病室での研究(Ohta et al, 2008: Japan Biometeorology)では、スギ材で内装された病室は冷房による急激な湿度低下を防ぎ、滞在者の負荷が少ないことを示唆しています。

調湿効果以外にも、木材を使用することには健康的・心理的にその他さまざまなメリットをもたらします。視覚的に有害な紫外線をカットし、赤外線を反射しやすい性質や、1/fゆらぎと呼ばれる人間にとって心地よいパターンによるリラックス効果、音響効果や人工物よりもはるかに緩やかな熱伝導率など、これらが様々な要因が重なり木材が「健康によい」「心理的にリラックス効果を得られる」と言われているわけです。

どれくらいの量の木材を使用すべき?

それでは、木材を内装材としてどんどん使用すると健康に良いのか?というと必ずしもそうであるとは限りません。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で、あまり使いすぎるのも考え物です。

東京大学恒次教授は2002年の研究で、部屋の木材率0%、30%、45%、90%の部屋を用意し、それぞれの部屋に入った被験者の血圧・心拍・脳波を研究しました。結果、部屋の木材率45%の部屋で被験者の数値は「快適」であることを示した一方で、90%の木材率の部屋では脳波の低下がみられたようです。

木材率30%前後の施工事例

 

また、木材の吸湿運動は、その際に周囲の湿度を吸収し、木材自体の体積が膨らむことも意味します。これは無垢フローリング材などの「床鳴り」や「突き上げ」の原因となるわけで、生活に必ずしも快適ではありません(ただし、木材なので室内の湿度レベルが元に戻ると膨張も収まる)。

木材率45%前後の施工事例

 

値段的な部分や美的感覚も考慮しなくてはいけません。室内の内装材や家具をすべて木材で統一したようなデザインは、値段もさておき、さながらログハウスのような純カントリースタイルになってしまうため、合わせられる用途がかなり限定的になってしまいます。

兵庫県立農林水産技術総合センターは、室内にどれだけの木材を使用すれば調湿効果が得られるのかの研究をおこないました。木材の露出面積、厚さ、木材の密度などが関係してきますが、例えば六畳1間に高さ1mの腰壁を使用するような場合、たとえ木板の厚さが1㎜でも3~5.4㎏分の水分の吸収が可能で、一定レベルの吸湿効果が期待できます(兵庫県立農林水産技術総合センター調べ)。

参考文献:

  • 木材なんでも小事典(木質科学研究所)
  • 木材ヘミセルロースの吸湿に関する研究(京都大学)
  • 木材の見えと木質内装(中村框司)
  • 兵庫県立農林水産技術総合センター森林林業技術センター

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