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第五章:チュニジアへの旅

時期は2024年9月。お盆返上でカビを削ぎ落した甲斐もあり、ナツメヤシ材の建材としての強度試験自体はパスすることができました。

一方、関係者の中に不安がよぎります「この調子で本番で用いる材をインドから仕入れたら、全部カビているんじゃないか・・?」「やっぱり・・ナツメヤシの輸入なんて無理だったんだ・・」「・・・心配いりません。実はこうしたトラブルに備えて、我々は布石を打っていました。


時を遡ること2ヶ月前の2024年7月・・インドからのコンテナを待つ中で、我々プロセス井口は念のために備えて別のチュニジア製のナツメヤシのサプライチェーンを開拓する行動に出ていたのです。

貿易にトラブルはつきものです。一つの出荷先がダメになった場合に備え、常に第二、第三のサプライヤーを抱えておく必要があります。というわけで、少し時間軸が前後しますが、本稿では灼熱の太陽の照り付ける7月のチュニジア、密かにおこなわれたチュニジア出張の様子を記していきます。


インドも遠いですが、それに輪をかけて遠いのがチュニジア。日本からの直行便などは当然なく、飛行機を乗り継いで丸一日程度かかる旅程です。

🏛️ 指標 🇹🇳 チュニジア 🇯🇵 日本
💰 GDP(名目) 約504億ドル 約4.4兆ドル
📊 GDP per capita 約4,000ドル 約35,000ドル
🗺️ 国土面積 約163,610 km² 約377,975 km²
👥 人口 約1,250万人 約1億2,400万人

日本の国土面積の半分くらいの北アフリカの国で、西はアルジェリア、東はリビアに囲まれています。アフリカと聞くと広大な自然を思い浮かべがちですが、北アフリカの首都圏はアジアの都市と比較して遜色ないモダンな建物もいくつか立ち並んでいます。

もっとも、我々の仕入れようとしているナツメヤシの材料はそのような都心部にはありません。空港のある首都チュニスから陸路でひたすら6時間ある農園を目指します。

チュニジアと言えば、一時はローマ帝国を恐怖に陥れたハンニバルで有名な「カルタゴ」の本拠地だったことで有名です。乾燥地帯であるチュニジアにあって貴重な木材資源であるナツメヤシは、当時のカルタゴ、すなわちフェニキア人たちの交易道具として富をもたらしたとされています。

カルタゴが滅びて約2000年・・当時の文明は忘却の彼方に流れ去りましたが、過酷な砂漠の中にあって生命の象徴であるナツメヤシの意味合いは揺らぎません。

さて、前回のブログで「インドからのナツメヤシ材にカビが生えていた」という問題が生じましたが、これをチュニジアから仕入れることで何が変わるのでしょうか?

大きな違いとして木材の含水量が挙げられます。乾燥地帯であるチュニジアでは、地面に落ちたナツメヤシの枝部分(商品利用される実の部分と異なり、地面に放置されることが多い)はそのまま自然乾燥され、薪や家畜のエサとして利用されます。

理想を言えば含水量18%以下の状態で出荷する必要があり、湿度の高いインドの沿岸部と違い、チュニジアの自然乾燥されたナツメヤシの枝はカビのリスクが低いのです。

📊 含水率別カビ・腐朽発生率

🌲 木材含水率によるトラブル

⚠️ 注意: ナツメヤシに限らず、一般的に木材の輸出入に際して目安となる含水量は18%以下です。自然乾燥で乾燥されると割れが少ない一方時間がかかり、人工乾燥であれば短期間で乾燥が行える分、場合によっては製品強度に影響を与えることもあり、バランスが必要です。


結論から言うと、このチュニジアのナツメヤシはカビを発生させない、含水量の低い基準のものでした。というわけで、プロセス井口はインドと並行してチュニジアのナツメヤシ輸入の準備を整え、お盆にインド材が全滅した際に素早くチュニジア材に切り替えることができたというわけです。

というわけで、万博に向けてはチュニジアのナツメヤシ材を輸入する、という方向性が定まりましたが、質が担保できたところで量のトピックに移っていきます。

Q.万博で必要な440万本のナツメヤシをどのように確保するか?

上述の通り、ナツメヤシの枝はナツメヤシの実と異なり商業利用されることが少ないため、その加工は勿論、収穫や梱包などのプロダクション体制が備わっているわけではありません。万博開始まで残り一年半、我々はチュニジアの農村にナツメヤシの枝の出荷製造拠点を作り出す必要があるのです。

続く

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